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インターネット・エクスプローラ7徹底活用法?応用?検索とRSS機能で情報を効率的に入手する?応用

IE7から追加された三つの機能、「検索」「RSSフィード」「セキュリティー(フィッシング詐欺検出機能)」の使い方を紹介する。IE7はこれらが追加されることで、より素早く的確に、そして安全にインターネットから情報を収集できるツールになった。(遠藤泰男)

複数の検索サイトを

一つのボックスで利用できる

 ネットで目的のウェブページを探す場合、通常はグーグルやヤフー!といった検索サイトを使うだろう。ただ、一発で意中のページが見つかるとは限らない。たいていは、検索サイトを行きつ戻りつしながら、また別の検索サイトで調べる、といった作業を繰り返すことになる。

 グーグルなどが無料で提供している、検索ボックス付きのツールバーをブラウザーに組み込んで使う場合もあるが、これで利用できる検索サイトは一つだけ。しかも、ブラウザーにツールバーが一本分追加されるため、ウェブページの表示スペースが狭くなってしまうのも欠点だ。

 IE7では、画面右上に検索ボックスが最初から組み込まれており、ここから複数の検索サイトを利用できる。検索サイトは、初期設定こそ「ウィンドウズ・ライブ」になっているが、追加が可能だ(図2?図6)。追加できるのは、グーグルやヤフー!はもちろん、オンラインショップの「アマゾン」や、フリーの百科事典サイト「ウィキペディア」など幅広い。これで、いちいち複数の検索サイトを開かずに、一発でさまざまな検索ができるようになる。

更新されたサイトの情報が

巡回せずに、自動でわかる

 ニュースサイトや日記サイトは、毎日のように情報が更新される。しかし毎回、サイトを巡回して更新状況をチェックするのは、結構な手間だ。サイトの数が多いと時間もかかるし、うっかり見落としてしまうこともある。

 そこでIE7で追加されたRSSフィード機能を使うと、わざわざサイトをチェックしなくても、更新状況が自動でわかるようになる。RSSフィードはウェブサイトのタイトルや要約、更新時刻などを記述した情報。あらかじめ登録しておいたサイトが更新されると、IE7に通知する仕組みになっている(図7)。そのためユーザーは、何もしなくても更新されたページの情報を入手でき、効率よく閲覧できる。

 設定方法は簡単だ。IE7で表示したサイトがRSSに対応していると、「フィード」ボタンがグレーからオレンジ色に変わる(図8)。これを押して表示されるページで「このフィードを購読する」をクリックすれば、登録は完了だ(図9、図10)。

 登録後、サイトの更新状況は、画面左上の星マークをクリックして現れる「お気に入りセンター」で、「フィード」ボタンを押すと確認できる(図11)。太字のタイトルが、更新されたフィード。クリックするとページが表示される。

 なお初期状態では、RSSの情報は一日一回確認するように設定されている。ニュースサイトなど時々刻々と更新される場合は、確認する頻度を上げて、例えば「三〇分」に一回程度にするとよいだろう(図12?図14)。

フィッシングサイトを見破り

アドレスバーに警告を表示

 IE7では、セキュリティーが大幅に強化され、フィッシング詐欺検出機能が新たに搭載された。

 フィッシング詐欺は、オンラインバンキング、オークションサイトなどにそっくりのニセのサイトへユーザーを誘導し、IDやパスワードを入力させて盗み取る犯罪行為。二〇〇五年以降、日本でも頻発している。

 IE7では、フィッシングサイトを表示したときに、「危険なサイト」あるいは「疑いのあるサイト」として警告する。アドレスバーの色が赤や黄色に変わり、メッセージが現れる(図15)。

 危険なサイトは、マイクロソフトが一時間に数回更新しているフィッシングサイトのリストを基に検出している。一方疑いのあるサイトは、サイトの特徴から判断しているため、フィッシングの可能性はあっても断定はできない。

 フィッシング詐欺検出機能はIE7をインストールした後に現れるセットアップ画面上で「オン」にすれば利用できる(91ページ参照)。自分のパソコンで有効になっているか、「インターネットオプション」の「詳細設定」タブで確認しよう(図16、図17)。

 フィッシング詐欺では、アドレスバーが表示されないサブウインドウを利用する手口がある(図18)。ニセもののアドレスを隠す目的で使われる。そこでIE7では、サブウインドウでも強制的にアドレスバーを表示するようにした。明らかに疑わしいアドレスなら、すぐに見破れるわけだ。

 サイトの安全性を証明する"南京錠"マークも改良された(図19)。これはウェブサイトがデータ暗号化プロトコル「SSL」に対応している場合に表示されるもの[注]。IE6では画面の下に表示されたが、IE7ではアドレスバーの右側、目立つ位置に現れる。

 ここをクリックすると内容が表示され、さらに「証明書の表示」をクリックすると、デジタル証明書が現れて安全を確認できる。

[注] SSL(Secure Sockets Layer)は、ウェブブラウザーとウェブサーバー間の通信を暗号化して、安全にデータをやり取りするためのプロトコル。個人情報の入力が必要なウェブサイトで、広く利用されている

3つの機能で情報収集は完璧

図1 IE7で採用された注目機能「検索」「RSSフィード」「セキュリティー」。この3点セットで、IE7は強力な情報収集ツールになった

検索ボックスから一発で調べる

図2 画面右上に付いた検索ボックス。ここにキーワードを入力して「Enter」キーを押すか、虫めがねボタンをクリックすると、初期状態では「ウィンドウズ・ライブ」で検索される

図3 グーグルなどほかの検索サイトを利用するには、右側の「▼」をクリックして「追加プロバイダの検索」を選ぶ。するとプロバイダーの一覧が表示される

図4 表示された検索サイトの一覧から、「Google」などを選び、リンクをクリックする。ここで選択したサイトは、図3のメニュー(検索オプション)に追加される。複数追加が可能だ

図5 図4の次に表示された画面で、「プロバイダの追加」ボタンを押す。下線をチェックすれば既定のサイトになる

図6 検索ボックスに文字を入力して「Enter」キーを押すとグーグルで検索できるようになった。同じキーワードをほかの検索サイトで探す場合は「▼」ボタンを押して、登録したサイト名を選べばよい

RSSで更新情報をユーザーに通知

図7 RSSは、対応するニュースサイトや日記サイトで情報(フィード)が更新されると、自動で通知する仕組みだ。ユーザーがサイトへアクセスして更新状態を確認する手間が省ける

図8 IE7でRSS対応ページを表示すると、「フィード」ボタンがグレーからオレンジ色に変わる。このページを登録するには、このボタンをクリックする

図9 すると、登録画面が表示されるので、このページの更新情報を今後もチェックしたい場合は「このフィードを購読する」のリンクをクリックする

図10 次に表示される画面で、「購読」ボタンを押す。なお、フィードは「お気に入り」と同じように、IE7の左側に表示される「お気に入りセンター」に登録される

図11 「お気に入りセンター」の「フィード」ボタンを押すと、登録されたRSSフィードのページ一覧が現れる。情報が更新されるとタイトルが太字に変わる

●更新を確認する頻度を上げる

図12 IE7の初期設定では、一日に一回だけ更新された情報を確認するようになっている。この頻度を変更するには、フィード名を右クリックして「プロパティ」を選ぶ

図13 表示された「フィードのプロパティ」画面で、「更新スケジュール」欄にある「カスタムのスケジュールを使う」を選び「更新の間隔」を設定する

図14 すべてのフィードで更新の頻度を変えるには、図13の「設定」ボタンを押して表示される「フィードの設定」画面で、「更新間隔」を選べばよい

フィッシング詐欺サイトを検出

図15 IE7ではフィッシングサイトの疑いがあるページを表示するとアドレスバーが黄色になる(上図)。また危険なサイトなら赤色になり、ページはまったく表示されない(下図)

図16 フィッシング詐欺検出機能の設定を有効にするには、「ツール」ボタンを押して「フィッシング詐欺検出機能」→「フィッシング詐欺検出機能の設定」を選ぶ

図17 インターネットオプションの「詳細設定」タブが開くので、「フィッシング詐欺検出機能」の項目から「自動的なWebサイトの確認を有効にする」を選ぶ

●サブウインドウのアドレスも表示

図18 IE6では、サブウインドウのURLアドレスは表示されなかったため、フィッシング詐欺に利用されることがあった(上図)。IE7ではすべてのウインドウで強制的にURLを表示する(下図)

●アドレスバーに「証明書」マークを表示

図19 安全なサイトを証明する南京錠のアイコンが、IE7ではアドレスバーの横に表示される

「ディフェンダー」でスパイウエアを検出する

 マイクロソフトはIE7と並行して、スパイウエア対策ソフト「ウィンドウズ・ディフェンダー」のベータ2も無償で公開している[注]。これはXP SP2用だが、IE7と同様にウィンドウズ・ビスタでは標準搭載される。

 スパイウエアは、インターネット上に公開されているソフトやウェブページを通して、ユーザーのパソコンに侵入。画面に広告を表示したり、勝手に個人情報を外部へ送信するプログラムだ(図1)。パソコンの動作を遅くしたり、不安定にする原因にもなる。

 ディフェンダーは、そんなスパイウエアがインストールされるのを防ぐuリアルタイム保護機能」と、すでにインストールされたスパイウエアを検出する「スキャン機能」を備える。スキャン機能は「スキャン」ボタンを押して実行するほか、定期的(初期設定では毎日夜二時)に自動で実行される。

 検出方法は、三つから選べる。初期状態では、スパイウエアが潜みがちなファイルのみを調べる「クイックスキャン」だが、ドライブ全体を調べる「完全スキャン」や、指定したフォルダを調べる「カスタム」も設定可能だ。

 こうして発見したスパイウエアは、削除するか、一時的に無効にする(図2?図5)。

パターンファイルは毎日更新

ただし他社製品と併用を推奨

 スパイウエアを見つけ出す手がかりになるパターンファイル(定義ファイル)は、インターネットを通じて自動で更新される。世界中から収集した情報を基に、ほぼ毎日更新しているという。

 なお、従来のスパイウエア対策ソフトと比べて検出能力は強力ではないため、マイクロソフトは他社製品との併用を推奨している。

[注] 正式版は、年内に登場する予定。ベータ2をアンインストールするには、コントロールパネルの「プログラムの追加と削除」から「Windows 防御ツール」を選んで「削除」ボタンを押せばよい

スパイウエアは、個人情報を盗む

図1 スパイウエアの仕組み。スパイウエアはソフトのインストール時などユーザーが知らぬ間にパソコンに侵入する。そしてパソコン内の個人情報を収集して、外部の犯罪者へ送る

図2 スパイウエア対策ソフト「ウィンドウズ・ディフェンダー ベータ2日本語版」は、マイクロソフトのサイトから入手できる

図3 ダウンロードしたファイルをダブルクリックしてインストール。途中で現れる右の画面では「推奨設定を使用する」を選ぶ

●スパイウエアを検出し、削除する

図4 スキャン後、スパイウエアが検出されなかったときの画面。IE7ではファイルのダウンロード時にもスキャンされる

図5 スパイウエアが検出されたときの画面。名前と警告レベル(高、中、低)が表示される。「すべて削除」ボタンで削除、「無視」ボタンを押すと、スパイウエアと判断されたプログラムを隔離できる

 

マイクロソフトが「ビスタ」に仕込んだ罠?それはマイクロソフトの"膨張DNA"?新OS「ビスタ」に仕込んだ罠

遠藤泰男 2006/06/03

 5月23日、米マイクロソフトはオペレーティングシステム(OS)の最新版である「ウィンドウズ・ビスタ」と次期統合ビジネスソフト「オフィス2007」のベータ版(製品版の直前段階の版)を公開した。

 ベータ版は、世界中の誰でもマイクロソフトのウェブサイトからダウンロードすることが可能。両ソフトともベータ版利用者から寄せられた意見を基に最終調整を加え、今年秋から企業向け、来年1月から個人向けに出荷を開始する予定だ。

 ウィンドウズとオフィスは、マイクロソフトの2本柱。年間100億ドルを軽く超える純利益のほとんどをこの二つのソフトから稼ぎ出している。なかでも、世界中で年間2億台以上売れるパソコン向けのOSで95%のシェアを誇るウィンドウズは、完全な独占構造だ。そのため独禁法上の係争が1990年代から続いており、現在のマイクロソフトは、米司法省、EUの欧州委員会など競争政策当局の監視下にある。

 今回のビスタは01年10月に発売したウィンドウズXP(日本語版は11月)以来、5年ぶりの新バージョン。その5年の間に、株式市場や多くのユーザーの関心のベクトルは、グーグルに代表されるインターネットサービス企業へ移行している。パソコンの盟主であるマイクロソフトは、創業30年を経た今でも売り上げ、利益とも高い成長を続けているが、成熟企業の印象が強くなっており、株価も冴えない。

 では、マイクロソフトが力を失ったのかといえばそれも違う。携帯電話端末、情報家電への浸透では苦戦しているものの、パソコン用ソフトでは依然として圧倒的な地位を保っている。

 貪欲な拡大戦略も健在だ。かつてLAN機能を組み込んだことでノベルを、インターネット閲覧機能を組み込んだことでネットスケープコミュニケーションズ(現AOL)を、音楽動画再生ソフトを組み込んだことでリアルネットワークスを窮地に追い込んだが、そうした拡大志向はマイクロソフトのいわばDNAだ。

 今回のビスタでも、さまざまなソフトをウィンドウズの標準機能に取り込んでいる。組み入れた主な新機能は検索機能、印刷用の文書フォーマットの機能、セキュリティ機能の三つだ。それぞれのジャンルにおける現在のチャンピオンは、グーグル、アドビシステムズ、シマンテック。当然ながら、それらの企業の経営は、大きなインパクトを受ける可能性が高い。

 グーグルに打撃与える魔法の"検索ボックス"

 "ウェブ2・0"の旗手として高く評価されているグーグルは、技術力の高さでヤフーなどポータルサイトの検索エンジンを蹴散らし、検索技術で圧倒的な立場を築いた。グーグルが05年12月期に検索やメールサービスなどから得た広告収入は60億ドル。マイクロソフトの広告収入は年間20億ドルで、その差は大きい。新しく勃興した企業には過敏なほどの反応を示すビル・ゲイツ会長(92ページ右下写真)、スティーブ・バルマーCEOが目下のところ、最も強く意識するライバルだ。

 昨年6月には広告を収益源とするインターネット中心の新しいビジネスモデル(ウィンドウズ・ライブ、オフィス・ライブ)を発表している。この新しいビジネス構想の仮想敵は、当然のことながらグーグルだ。

 そのグーグルは、ビスタの登場によりユーザーを大量に失いかねない危機に見舞われる。マイクロソフトは昨年6月にグーグルに対抗するために自社開発した「MSNサーチ」の無償提供を開始している。この検索エンジンは、グーグルの技術と同様、パソコン内とインターネット内を検索することが可能なソフトだ。すでに、マイクロソフトはインターネット閲覧ソフト「インターネット・エクスプローラー」の新バージョンにMSNサーチへつながる検索ボックスを設けているが、今度はビスタのスタートボタンの真上に検索ボックスを設ける。

 もちろん、10年前にネットスケープを飲み込んだ当時とは環境がガラリと変わっている。米司法省や欧州委員会との取り決めにより、マイクロソフトは競合する他社に対して同等の競争環境を保証しなければならない。今回の検索ボックスについても、パソコンメーカーは出荷時に自由に標準設定の検索エンジンを選ぶことができるほか、購入後にもユーザーが自由に検索エンジンを替えることが可能だ。

 とはいえ、かなり多くのユーザーは買ってきたときの標準設定をあえて変更せず、そのままの状態でパソコンを使うだろう。

 "標準設定"は極めて大きな意味を持つ。マイクロソフトは特別な営業努力をしなくてもMSNサーチを標準設定にできるのに対し、グーグルはパソコンメーカーにインセンティブを支払うなどして、ビスタの標準設定をグーグルにするよう促さなければならない。パソコンメーカーにしてみれば、よほど経済的なメリットがないかぎり、マイクロソフトのへそを曲げることはしないだろう。

 社風にそぐわぬ泥臭い営業努力をしなければ、MSNサーチがビスタ出荷と比例してジワジワ伸び、グーグルへの強力なボディブローとなる可能性がある。

 セキュリティを巡るシマンテックとの確執

 また、ビスタには新しい文書管理フォーマットとして、「XPSドキュメントフォーマット」が標準で組み込まれる。これにより、マイクロソフトはプリンタやOSなどの環境に依存しないドキュメントフォーマットである「アドビPDF」で圧倒的な地位を持つアドビシステムズの生存圏へと踏み込む。

 とはいっても、アドビのソフトとXPSでは、その技術的な中身が大きく異なっており、肝心のアドビはそれほど意に介していないようだ。それでも、新たにアドビのソフトをダウンロードせず、ウィンドウズに標準添付されているフォーマットを利用するユーザーはジワジワと増えていく可能性がある。

 セキュリティソフトをめぐる紛争は、激しい。ウィンドウズの独禁法問題では、マイクロソフトに対し最も厳しい対応をしているのがEUだ。そこでシマンテックはEUの競争政策当局に対し、マイクロソフトがセキュリティソフトをウィンドウズに組み込まないよう訴えた。それもあって、マイクロソフトはスパイウエア対策など悪意を持つソフトの侵入を排除する機能を組み込むにとどめ、ウイルス対策機能については別個に提供することを決めた。

 シマンテックのジョン・トンプソンCEOは「マイクロソフトの参入は大歓迎。われわれにとってもマイクロソフトにとっても十分なビジネスチャンスがある。とはいっても、これまで同様、セキュリティにおけるリーダーの地位を譲るつもりはない」と余裕を見せている。

 しかし、内心は穏やかではないはずだ。何しろ、シマンテックが影響を受けるのはセキュリティソフトだけではない。ファイルやフォルダ、システムの設定などパソコンの中身を丸ごとバックアップするソフト「ノートン・ゴースト」も窮地に立たされる。ゴーストは、大企業が、設定を自社仕様にカスタマイズしたウィンドウズを数多くのパソコンにコピーする際に用いられてきた。が、ビスタでは標準機能としてバックアップ機能が加わるため、ゴーストが受けるダメージは大きい。

 こうした対立関係が少なからず影響しているのだろう。5月18日、シマンテックは、ベリタスソフトウエア(シマンテックが買収)の知的財産権をビスタが侵害しているとして提訴した。トンプソンCEOは現在の売り上げ50億ドルを2010年までに100億ドルへ拡大する成長戦略を描いているが、マイクロソフトのビスタがその先行きを大きく左右することになりそうだ。

 もちろん、マイクロソフトは摩擦を承知の上で機能拡張を進めている。世界最強ともいわれる法務部隊を持つマイクロソフトで独禁法問題を統括するデイブ・ハイナー副社長は、ウィンドウズに新しい機能を統合するに当たって三つの点に注意しているという。

 一つ目は「新機能に対して開発業者の需要があるか」。二つ目が「より使いやすく、より有用になるか」。三つ目が「他のOSメーカーが自社のOS製品に当該機能を含める可能性が高いか」。要するに、お客さんのニーズがあれば、アップルの「マッキントッシュ」やサンの「ソラリス」などがやっているような機能統合はやりますよ、ということだ。

 ただし足かせはある。独禁法当局からは、機能統合に当たって競合相手が不利にならないよう自由に設定を選択できる柔軟性が求められており、それを順守する必要がある。過去のように、短時間で競合相手を潰すことはできない。

 "ウェブ2・0"なるものとの激しい競争にもまれて苦戦しているかのように見られることが多いが、独占がもたらす強さは変わっていない。マイクロソフトは、どんなに時間をかけてでも、仮想敵の生存圏に食い込み、ウィンドウズの機能拡張を進めようとするだろう。それがこの会社のDNAなのである。

[写真]「ウィンドウズ・ビスタ」の新機能「エアロ」(上)は、複数のウィンドウを立体的に表示可能。でもこれって、サン・マイクロシステムズの「ルッキング・グラス」(左)とソックリでは?

<カコミ>

グーグルを飲み込む!

 ウィンドウズ・ビスタではスタートボタンを押すと"検索ボックス"が表示される。標準設定の前提は、もちろんマイクロソフトの「MSNサーチ」だ。となれば、MSNサーチを用いるユーザーが自然と増加する可能性が高く、検索技術トップのグーグルは「公平性に欠ける」と主張している。しかし、米司法省は「容易に設定変更できること」から独禁法の同意判決違反ではないとの判断を示している。

アドビを飲み込む!

 新しい印刷アーキテクチャとして採用したのが、独自に開発した文書フォーマット「XML Paper Specification(XPS)」。これはデファクトを握るアドビシステムズのアドビPDF(Portable Document Format)と完全に競合する。マイクロソフトでは「競合するフォーマットを用いるプログラムもウィンドウズ上で十分に動作する」ことなどから問題なしと判断、ウィンドウズ・ビスタに標準で組み込む。

シマンテックを飲み込む!

 ウィンドウズ・ビスタには、スパイウエアなど悪意を持ったソフトを排除する機能「ウィンドウズ・ディフェンダー」が組み込まれる。「消費者や政府・公共団体はウィンドウズのセキュリティ強化を要求している」ことなどが組み込みの理由。シマンテックなどの反対もありウイルス対策機能は組み込まずウィンドウズと別個に有償で提供するが、セキュリティ専業者の経営への影響は大きいと見られている。

<カコミ>

誌上検証 Officeはどこまで便利に?

Word

 「ワード」「エクセル」などオフィスの主要ソフトのインターフェースは、ガラリと表情を変える。その最大のポイントは、従来のメニューとツールバーの代わりに目的別(=結果指向)のコマンドタブが採用され、必要な機能を見つけやすくなったことだ。とはいうものの、慣れるまでにはそれなりに時間が掛かりそう。

 「ワード」の進化のポイントの1つは、文書作成後に外部へ配布する場合、最後に「ドキュメント検査」を行うことで変更履歴など途中経過の情報が外部へ漏れないようチェックする機能がついたこと。フォント選択や全体のレイアウト調整も、より簡単にできるようになった。

[写真]凝った文書が、より簡単に作成できる(上)。新機能のドキュメント検査(右)。専門用語ばかりで、ちょっと難解

PowerPoint

 スライド(紙芝居)形式のプレゼンテーションソフトの定番として浸透したパワーポイント。これまでは個人ユーザー向けのオフィス(=パーソナル・エディション)には含まれていなかったが、2007では中小企業・個人ユーザー向けパックのスタンダード・エディションにも含まれる予定。新パワーポイントでは、図やグラフを作成する場合のデザインの選択肢が迷うほど拡充しており、サードパーティ作成のテンプレート等を用いなくても、かなり凝ったプレゼン資料が作成できる。背景、図表などの色合いや字体は「テーマ」の中から好きなものを選べばワンタッチで統一することが可能だ。クールで澄ました雰囲気のプレゼンを和風に切り替えるのもワンタッチだ。

[写真]オンライン機能で、社内、部門内でプレゼン資料を共有することが可能だ(上)。図表などのデザインは圧倒されるほど豊富(右、下)

Excel

 数字と格闘するビジネスマンが仕事上で最も頻繁に使うのが表計算ソフトのエクセルだろう。新バージョンでは1500個ほどある機能を目的別に仕分けして配置することで、目的の機能に少ないマウスクリック数でたどり着けるようになった。ユーザー調査の結果では、現行の「エクセル2003」と比べてマウスクリック数を60?65%削減できるという。作業効率の向上が期待できそうだ。

 パワーポイントと同様にグラフや表をデザインする際の選択肢が大幅に増えた。新機能としては、表を見やすくするために数字の上にグラフを重ねる「データバー」機能が加わった。これにより、直感で数字の大きさを把握できるようになる。

 また、これまで扱えるデータ数は256列、6万5536行までだったものを1万6384列、104万8576行まで拡大。膨大な量のデータをハンドリングできるようになった。

<Interview>

顧客はIBMやグーグルを選ばない

ジェフ・レイクス ビジネス部門担当プレジデント

 ――「オフィス2007」のポイントについて、ご説明下さい。

 ガートナーなどのアナリストが「オフィス2007は過去のオフィスの中で最大規模の進化」と評価しています。今回のリリースで進化した主なポイントは4つあります。結果指向のユーザーインターフェースを採用した点、チームワーク作業のサポートを強化した点、大企業のドキュメント管理を強化した点、ビジネスの情報力・洞察力を高められる点です。もちろん、これ以外に何千もの改善点があります。

 現行の「オフィス2003」はそれ以前の2つのリリースと比べて極めて迅速に導入が進みました。2007も急速に普及するはずで、来年末までには日本のオフィスユーザーのうち半数が、2003か2007を使っている状態になると思います。

 ――複雑化していくビジネス向けアプリケーションを企業へ売り込むためには、営業力、提案力が重要だと思います。マイクロソフト製品を強力に売り込むためにコンサルティング会社を買収したいとは思いませんか。

 そうは思いません。われわれの第1のフォーカスは優れたソフト開発であり、コンサルティング会社もわれわれの顧客です。私たちは優れたソフトでインフォメーションワーカー(知識労働者)に力を与えることが、顧客企業の成功につながると信じています。

 一方で、(大手コンサル会社のPwCコンサルティングを買収した)IBMは顧客企業の成功のためには、顧客のビジネスプロセスをIBMが受託するプロフェッショナルサービスが重要と考えています。しかし、ほとんどの企業はビジネスプロセスを自分たちでコントロールしたいと考えている。企業と働く社員の成功のためには、マイクロソフトのアプローチが優れています。

 ――IBM(旧ロータス)の情報共有ソフト「ノーツ」を利用しているユーザーに対し、マイクロソフト製品への買い換えを勧めています。

 ノーツは10年前にはすばらしい製品でした。当時は企業のニーズを満たしていたかもしれません。しかし、世界的にインターネットの利用が広がり、企業内でも大量に使われるようになり、状況は変わりました。そのため、企業は、非常に速いスピードでマイクロソフト製品へのシフトを始めています。

 マイクロソフトはユーザーに優れたソフトを提供することにフォーカスしている。一方でIBMはソフトにフォーカスしているわけではない。だからこそ、多くの企業が知識労働者向けの基盤システムとしてマイクロソフトを選んでいるのだと思います。

 ――グーグルも知識労働者向けのサービスを提案し始めています。

 グーグルはソフト開発や知識労働者支援にそれほどフォーカスしているわけではありません。グーグルは、あくまで検索と広告にフォーカスした企業です。確かに新しい取り組みを発表していますが、それでも検索と広告が主たる事業であり続けると思います。

 今、2社の例を挙げましたが、企業はソフトを選ぶ際に、その製品が継続的に出荷されるのか、将来にわたって継続的に改善されていくのかどうかを重視しています。その確証がなければ、簡単にそうした会社の提案を選ぶことはできないでしょう。

profile

Jeff Raikes

アップルコンピュータで表計算ソフト「ビジカルク」を開発。その後、1981年にプロダクトマネジャーとしてマイクロソフトへ入社。ビル・ゲイツ会長、スティーブ・バルマーCEOに次ぐ古参幹部で、一貫してマイクロソフトのドル箱であるアプリケーションパッケージ「オフィス」関連製品の戦略と設計を指揮している。米国北西部にメジャーリーグを存続させるための活動にも参加しており、1992年のシアトルマリナーズ買収に貢献した。

 

仕組みからわかるセキュリティー講座?犯罪に直結するスパイウエア 情報漏えいはウイルスより危険

遠藤泰男 2006/05/24

 スパイウエアは、メールなどからパソコンに侵入し、個人情報を盗み取る凶悪な不正ソフトだ。個人情報が漏えいする点では、最近話題のファイル交換ソフト「ウィニー」で感染する暴露型ウイルス[注1]と同じだが、危険性はスパイウエアの方がずっと高い。

 暴露型ウイルスは不特定多数に感染し、個人情報をネットに公開するのが目的。ウイルスの作成者は、言わば愉快犯だ。一方スパイウエアは、特定の個人を狙い打ちして送りつけ、預金口座のパスワードやIDをかすめ取り、最終的には現金を盗む。窃盗が目的で、被害も大きい。

 しかもスパイウエアがやっかいなのは、被害が明らかになりにくい点。パソコン内の情報をこっそりと犯罪者に送信するため、被害者は自分の情報が漏えいした事実に気が付きにくい。昨年七月、スパイウエアでパスワードが盗み出され、みずほ銀行などネットバンキングから総額約九四〇万円を詐取される事件が発生した。このときの被害者も、事件が発覚するまでパスワードの漏えいに気が付かなかったという。

 そこで今回は、凶悪化するスパイウエアの実際と、効果的な防御方法を紹介する。

広告目的の「アドウエア」

危険な「トロイの木馬」

 「スパイウエア」という呼び名は、一般にパソコン内にある情報を外部に漏らすソフトウエアの総称だ。実はスパイウエアといっても、さまざまな種類がある。

 図2は、今年四月に日本で検出された、主なスパイウエアだ。検出数は多いが危険性が低い「アドウエア」、数は少ないものの危険性が高い「トロイの木馬」[注2]。ほかに「キーロガー」などがある(図3)。具体的にそれぞれどのようなものか、順に説明しよう。

 まずアドウエアは、ユーザーの嗜好に合わせて、ポップアップ広告などを表示するソフトのこと。ネット広告を効果的に発信するため、ユーザーの個人情報(嗜好など)を集める目的で開発された。ユーザーが閲覧したウェブサイトの履歴データを集めて、インターネットを通じ、外部のマーケティング会社などへ送る。重要なパスワードやファイルが盗み出されるわけではないので、金銭的な被害はない。

 一方、危険性が高いトロイの木馬は、正確には「リモート制御型のトロイの木馬」という。パソコンに侵入されると、外部からリモートコントロール(遠隔操作)されてしまう。パソコン内の情報が盗み出されるだけでなく、パソコンを完全に乗っ取られるおそれもある。

 もともとスパイウエアの起源はアドウエアで、その後、トロイの木馬のような不正ソフトが開発されるようになった(図4)。トロイの木馬は、一見普通のファイルのように偽装されている。メールに添付して送られる場合が多いため、怪しいファイルを受け取ったら、必ずファイル名の拡張子を確認するようにしておこう(図5)。

 ちなみに三つ目のキーロガーは、ユーザーのキー入力を記録して外部に送信するスパイウエアのこと。インターネットカフェに置いてあるパソコンに仕掛けられて、ネットバンキングなどのパスワードを盗むのに利用される。

ネットバンキングなど

金融機関が次々に対策

 では、スパイウエアの被害に遭わないめに、ユーザーはどうすればよいのだろうか。

 昨年発生したネットバンキングの不正送金事件を受けて、金融機関では、独自にスパイウエア対策を導入している(図6)。対策は、主に二パターンある。

 まず一つは「ソフトウエアキーボード」だ(図7)。これは、画面上に表示したキーボードをマウスでクリックして文字を入力するソフト。キーボードの入力を記録して外部に送信するキーロガー対策として採用されている。

 あまり導入コストがかからないため、多くの金融機関が採用している。しかし新手のスパイウエアには、キー入力だけでなく、マウスの軌跡を記録するものもあり、今や完璧な防御策とは言えない。

 そこで今年、一部の金融機関が導入し始めたのが「ワンタイムパスワード」だ(図8)。ユーザーに、一〇〇円ライター大の「パスワード生成機」を配布。ここに、一分ごとに異なるパスワードが表示されるため、ユーザーがネットバンキングを利用するときに、そのパスワードを入力すればよい。たとえパスワードが盗まれても、一分後には新しいパスワードに切り替わっているため、不正に利用される心配がない。

 パスワードの漏えいを防ぐのではなく、パスワードが漏れても不正に利用できないようにした点が新しい。なおパスワードの生成ルールは利用者ごとに異なり、複数のパスワードから生成パターンを推測するのは困難だという。

 ただし、この方法は利用者にパスワード生成機を配らなければならず、金融機関が負担するコストがかさむため、採用している例はまだ少ないのが現状だ。

 そこで、スパイウエア対策は、金融機関任せにせず、ユーザーが自分で専用の対策ソフトを導入するのがベスト。ここでは、そのためのソフトを二本紹介しよう。

マイクロソフトが

対策ソフトを無料で公開

 マイクロソフトでは、「Windows Defender(ウィンドウズ・ディフェンダー)」というスパイウエア対策ソフトを無料で公開している(図9?図13)[注3]。現在はまだ英語のみの「ベータ版」ながら、五月以降に日本語版が公開される予定だ。

 ディフェンダーの大きな特徴は、「スパイネット」という独自の情報交換システムを採用している点。世界中のユーザーとスパイウエア情報を共有して、それをフィルターとして使い、侵入を防御する仕組みだ。

 初期設定で、毎日決まった時刻にスキャンしたり、常時防御するようになっているが、手動で検出・削除もできる。なお八〇ギガバイトのハードディスク(うち八割を使用)を搭載したパソコンで試したところ、必要最小限のファイルを調べるクイックスキャンで約一分半、ハードディスク全体を調べるフルスキャンでは、約四五分かかった。

 無料で利用できるスパイウエア対策ソフトには、ほかに「スパイボット」もある(図14、図15)。六年前に公開された"老舗"で、「Language」メニューから「Japanese」を選べば、日本語で表示でき、操作も単純でわかりやすい。

 今後、スパイウエアを使ったネット犯罪は増加する傾向にある。これらのソフトを導入して、自己防衛するように心がけよう。

[注1] ファイル交換ソフト「Winny(ウィニー)」を通して感染する暴露型ウイルス「Antinny(アンチニー)」は、感染したパソコンに保存されているファイルを、勝手にWinnyネットワークにアップロードする。昨年から今年にかけて、大手企業や公共団体関係者のパソコンが感染し、機密資料が次々に流出。大きな社会問題になっている

[注2] 「トロイの木馬」は、一見無害に見せかけて、裏では有害な動作をするプログラムのこと。その中でも、標的となったパソコンに外部から侵入できる"裏口"を作り、犯罪者が自由にそのパソコンを制御できるようにするものを「リモート制御型のトロイの木馬(RAT、Remote Access Trojan)」や「バックドア」などと呼ぶ

[注3] ウェブサイトで「Windows Defender(ベータ2)をダウンロードする」をクリックし、「Continue」ボタンを押す。ウィンドウズの正規ユーザーか確認する「Windows Genuine Advantage」をインストールするか尋ねられるので「インストールする」を選び、「Download」ボタンでダウンロードして実行する

暴露型ウイルスより危険なスパイウエア

 

欧州委、マイクロソフトにウィンドウズ・ビスタ関連で警告書簡

遠藤泰男 2006/03/29

欧州連合(EU)の欧州委員会で競争政策を担当するクルス委員は先週、米マイクロソフト(Nasdaq:MSFT)に書簡を送り、パソコン向け次期基本ソフト(OS)「ウィンドウズ・ビスタ」に特定の機能を組み込んだ場合は欧州での販売を認めないと警告していた。

同委員はインタビューで「われわれはマイクロソフトがビスタの設計を、欧州の競争政策法令に沿ったものにするよう期待している」と述べた。

同氏は、マイクロソフトのスティーブ・バルマー最高経営責任者(CEO)あてに先週、書簡を送り、同氏の懸念を説明したとしている。これは、ウィンドウズに組み込んでいるソフトウエアをめぐる欧州委と同社の7年に及ぶ論争を反映している。

マイクロソフトの広報担当者トム・ブルックス氏は「当社は20日に投函(とうかん)された書簡については承知しておらず、したがって欧州委の個々の懸念についてコメントすることができない」とした。そのうえで、「消費者は、より安全で機能的なOSを望んでいる。当社はこうした声に応えてビスタを開発し、同時に法令も順守している」と語った。

マイクロソフトは先週22日、ビスタの消費者向け発売が、予定していた年内ではなく、2007年1月になるとの見通しを明らかにした。「セキュリティーやその他の品質にかかわる面で、あと数週間、テストの期間が必要なため」としている。

クルス委員の広報担当者、ジョナサン・トッド氏は「欧州委は、マイクロソフトが計画しているインターネット検索機能について懸念している」とした。具体的な説明はなかったが、グーグル(Nasdaq:GOOG)などインターネット検索サービス各社はこれまでに、マイクロソフトがインターネット閲覧ソフト「インターネット・エクスプローラー(IE)7」を利用して、パソコンユーザーを不公正に同社の検索サイトに誘導するのではないかとの懸念を表明している。マイクロソフトは、IE7から競合他社のサービスに接続できるようにするとしている。

トッド氏によると、欧州委はさらに、マイクロソフトが一部のセキュリティー機能をビスタに組み込まないよう警告している。インターネット・セキュリティー・ソフト大手のシマンテック(Nasdaq:SYMC)は、マイクロソフトがビスタにセキュリティーソフトを組み込む恐れがあると欧州委に申し立てていた。

マイクロソフトは、ビスタにウイルス対策ソフトを組み込む予定はないとしている。ただ同社は、パソコン利用者の承諾なしに情報を集めるスパイウエアを排除するためのツールである「ウィンドウズ・ディフェンダー」を組み込む。

 

特集2?システム化するOffice 2007?システム化するOffice 2007 狙いはあらゆる情報活用の支援

遠藤泰男(パソコンインストラクター) 2007/01/08

「高価な電子文具としてのOfficeは、もう十分」。こう考える企業は少なくない。マイクロソフト自身も、このことは理解している。最新版のOffice 2007では、クライアントにサーバーを組み合わせた「システム」としての位置付けを強調。個人からチーム、全社まで、企業の情報活用全般を支援するものになったとアピールする。

Office 2007は、企業にとって価値ある製品なのか。その実力を追った。

 「Office97以来、ほぼ10年ぶりとなる大きな変化。ユーザー・インタフェースの一新やサーバー連携などを通じて、企業で働く人の生産性を大幅に向上させることができる」。

 長年Officeの開発を率いてきた、米マイクロソフトのスティーブン・シノフスキー シニアバイスプレジデントは、2006年11月に出荷を開始した「2007 Office system」(以下Office 2007)についてこう話す。

 Office 2007でマイクロソフトが狙うのは、文書・電子メールの作成やスケジュールの管理、情報の検索を通じた個人の生産性向上だけではない。作成した文書を数人でレビューして内容を改訂、あるいは作成した文書を上司に渡して承認を仰ぐ、会議の日程を調整するといった、チームや部門レベルの業務、さらには企業情報ポータルの構築や全社での文書管理などの全社レベルの生産性向上を実現することだ。

 Office 2007ブランドに含まれる製品も、30以上に増えた。クライアント・ソフトには、文書作成ソフトのWord 2007、表計算ソフトのExcel 2007、電子メール・ソフトのOutlook 2007、プレゼンテーション・ソフトのPowerPoint 2007に加え、作図ソフトVisio 2007、プロジェクト管理ソフトProject 2007などがある。主要製品をまとめてパッケージ化したスイート製品も6種類に上る(表1)。

 マイクロソフト日本法人でOffice製品事業を統括する、横井伸好インフォメーションワーカービジネス本部長は、「2007 Office systemは、『オフィス』における情報系業務全般を支援する『システム』を提供するもの」と言い切る。

 個人の生産性向上に最も寄与するとマイクロソフトが考えているのが、ユーザー・インタフェースの変更である。1989年に出荷したWord1.0から採用してきたプルダウン・メニューに替えて、タブとアイコンを組み合わせた「リボン」と呼ぶメニュー群を採用している(図1)。各タブには、利用者が実行する作業を想定したコマンドを集めた。

 「挿入」タブには文字の入力や文字体裁の編集、「ページレイアウト」タブにはページのサイズや背景画像の設定といった具合だ。「様々な機能を分散して配置するのではなく、関連する機能をひとまとめにすることで、必要な機能をより簡単に見つけることができる」(インフォメーションワーカービジネス本部の田中道明Office製品マーケティンググループ マネージャ)という。

 マイクロソフトはOffice製品のユーザー・インタフェースがメニュー過多になってしまった反省から、Office 2007のユーザー・インタフェース開発では「時と場合に応じて表示するメニューを動的に変更する」(田中マネージャ)方針を採用した。

 Word 2007では、利用者がテキストを書いている最中は標準タブ群を表示しているが、文書中の図データを選択すると、それまでの標準メニューにはなかった「図ツール」というタブが、自動的に現れる。図ツールには、画像のスタイル(影付き、黒縁あり)や特殊効果(回転、ぼかし)といった、画像を編集するコマンドを集めている。

ユーザー操作を4割減に

 ユーザー・インタフェースに関するリボン以外の新たな特徴としては、「ライブ・プレビュー機能」がある。文字や画像を編集したり表示を変更したりする際に、メニューを開いてマウス・カーソルをメニューの位置に持って行くだけで、効果を確認できる。

 「あるフォントを適用して気に入らなかったら、また範囲を選択し直してフォントを選んで、といった作業の繰り返しを減らせる」(田中マネージャ)。

 同氏によれば、これらの新機能によって、Office 2007ではユーザーが目的の作業を実施するための平均クリック数を、「Office 2003の60%程度に減らすことができる」という。

 横井本部長は、「全世界3600人の利用者に対して当社が実施した調査では、新ユーザー・インタフェースを魅力的と答えた人は84%、慣れれば従来のユーザー・インタフェースよりも使いやすそうだと答えた人は97%に上った。一般に言われるほど、新ユーザー・インタフェースへの抵抗は多くないと考えている」と話す。

 実際にリボンを試してみた大成建設 情報企画部の古口泰司氏は、「最初はとっつきにくいが、慣れれば意外に操作性は良い」と、一定の評価を下す。

 チームや企業全体の生産性向上のためにマイクロソフトが力を入れているのが、WordやExcel、Outlook、PowerPointと連携するサーバー製品の機能強化だ。これらのソフトと連携するサーバー製品の中核となるのは、情報共有の基盤となる「SharePoint Server 2007」と、グループウエアの「Exchange Server 2007」である。

 SharePoint 2007は、社内で作成したOffice文書を蓄積し、共同作業を進めるための基盤となるソフト(次ページの図2)。同社が自ら"Office Server"と呼ぶほどの力の入れようだ。

 SharePoint 2007では、新たに(1)社内文書管理(ECM)、(2)ブログ、Wiki、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)、RSSなどのWeb2.0と呼ばれる種類の新しいコラボレーション、(3)Webサイトのコンテンツ管理(WCM)、(4)電子フォームによる帳票作成などの機能を取り込んだ。これらの多くは、WordやExcelなどから利用できる。

 例えば、ドキュメントの承認ワークフローは、Wordなどの文書作成画面から直接開始できる。Outlookで管理している予定表や連絡先、ドキュメントと、SharePointで管理する情報を双方向で同期させることも可能だ。ExcelやPowerPointで作成したファイルをSharePointに登録し、社員で共有する機能も備える。

 横井本部長は、「最近のOfficeの導入案件では、SharePointを同時に購入する企業が増えてきた。コンプライアンスの高まりというニーズに文書管理機能があっているのだろう」と話す。

 三洋電機も、「Information Rights Management(IRM)」という情報保護機能で、Officeの利用者が細かな権限設定を意識することなく文書を管理できることを評価した一社だ。IRMを使えば、閲覧、印刷、編集の許可などの権限設定は、一つひとつの文書に対して設定する必要がなくなる。

 「SharePoint 2007では、文書の格納場所(ドキュメントライブラリ)に保存する際に自動的に権限を付加するので、煩雑な操作が不要な上、設定漏れも防げる」(インフォメーションワーカービジネス本部の吉村徹也シニアプロダクトマネージャ)という。すでに三洋電機は先行ユーザーの1社として、06年10月からSharePoint 2007の利用を開始している。

電話やファクシミリの共有も可能に

 ExchangeもSharePointと同様、クライアントとの連携を強化した。元々、ExchangeはOutlookとのメール・ソフトとして利用することを前提にしたグループウエアだが、2007ではユニファイド・コミュニケーション機能を実装した。Outlook 2007を組み合わせると、電子メールやボイスメール、ファクシミリなどで送受信するメッセージを、すべてOutlook 2007上で利用したり管理できる。メールという形式を超えた情報共有が可能になる。

 例えば、社外から電話をかけると、Exchange 2007が利用者宛てにかかってきた電話音声や受信したメール、当日のスケジュールなどを、自動音声で読み上げる。メールの確認だけでなく、電話操作で返信したり、スケジュールを変更することも可能である。

 Exchange 2007は、セキュリティ面でも強化を施した。電子メールの利用ポリシー設定機能を搭載。メール本文に不適切な表現や機密情報が含まれているかどうかをチェックして該当するメールを送信者へ自動的に差し戻したり、電子メールの種類に応じて保存期間を設定したりできるようになった(図3)。利用ポリシーは電子メールの管理者が設定・変更可能だ。

 横井本部長はOffice 2007を、「クライアント・ソフトとサーバー・ソフトをバランス良く組み合わせることができた初めての製品」と自信を見せる。

 新しい種類の情報共有を可能にするソフトとして注目されているのが、Office 2007から加わった唯一の製品であるGroove 2007だ。Grooveは利用者のパソコンからパソコンへ、リレー形式で文書ファイルやスケジュールなどのデータをやり取りする、ピア・ツー・ピア(PtoP)型の情報共有を可能にするグループウエアである。

 マイクロソフトの松田誠シニアプロダクトマネージャは、「Grooveは、特定の目的に応じて必要なメンバーだけが集まって実施するタイプの共同作業を対象したソフト」と説明する。

 より具体的には「2?3カ月といった比較的短期間に、人数は20?30人くらいで、文書をどんどんアップデートしていくような業務」(横井本部長)が向いている。複数の企業と進捗や仕様書を共有するシステム開発プロジェクトや、複数のチーム・メンバーが共同で編集する新商品の企画書作成、あるいは社内の各部署からメンバーを募って立ち上げた委員会の議事録や資料を作成する、といった用途である(図4)。

 こうした共同作業を支援するため、Grooveは三つの特徴を備える。一つは、PtoP型の情報共有方式である。ファイルや各自のスケジュール情報、掲示板に書き込んだ内容などは、利用者のパソコン上にあるGrooveに保存される。ここに保存した情報は、すべての利用者のパソコンでリアルタイムに同期して、同じ状態に保たれる。

 二つ目の特徴は、共同作業の設定が簡単であることだ。ファイルやスケジュールを各メンバーのデスクトップに保存するための「ワークスペース」を利用者の一人が起動して、他の利用者のメール・アドレスを登録すればよい。これで、他の利用者にメールで共同作業の開始が通知され、自動的にワークスペースが起動する。

 三つ目の特徴はセキュリティである。利用者間の通信はすべて、RSA暗号を使って暗号化する。あるグループで共有する情報は、登録した利用者しか閲覧も変更もできない。サーバー・ソフトのGroove Server 2007を併用すれば、ユーザー・アカウント管理やログ管理も可能になる。

 一方で、「成果物の文書ファイルを長期間保存したり、全社で閲覧可能な状態にするには、SharePointの方が向いている」(横井本部長)。Grooveは、SharePointへファイルを登録する機能も標準で備える。

 マイクロソフトはOffice 2007に様々な強化を施したが、一般企業の期待とは必ずしも一致していない。企業の関心はExcelなどの個別ソフトの機能強化に集中しているというのが現実だ。

 本誌とITproが06年11月に実施したアンケートでOffice 2007への期待と不安を尋ねたところ、期待の1位は、「個々のアプリケーションの機能強化」(43.6%)。SharePointやExchange Serverとの連携はそれぞれ9.8%、8.1 %にとどまっている(図5)。

 導入の理由も消極的だ。「パソコンの入れ替えが発生するため」の46.1%で一番多く、「機能が魅力的」とする回答は29.4%にとどまった。

 不満点は、「価格が高い」(69.3%)が圧倒的に多かった。「問題はOfficeが高すぎることにつきる。高くするなら、せめてセキュリティホールがない製品にしてほしい」(営業・販売課長)というアンケートへの意見が、こういった不満を代表するものだろう。

 企業のOffice 2007の導入意向も低調である。「導入する計画がある」と答えた企業は14.5%、「具体的な計画はないが、検討している」が18.7%となった(図6)。導入を検討している企業は、全体の3分の1程度なのだ。

 利用できるOSの制限についても不満が高かった。「利用できるOSがXP/ Vistaに限定される」ことには、37.5%もの企業が不満を感じている。アンケートによると、社内のいずれかでWindows 2000を使っているユーザーは全体の76.1%に達する(複数回答)。

 自由回答でも、「今、全社標準のOSがWindows 2000なので、まずOSをバージョンアップする必要がある」(品質マネジメント担当部長)などの声が数社から上がった。

 またマイクロソフトは、64ビット版のExchange Server 2007だけを提供する。同社は「ユーザーの求める高い性能要求に応えるには64ビット版が最適」と説明するが、「前版のExchange Server 2003を出した際に、次期バージョンは32ビット版を出荷しないと説明すべきだった」(メーカーのシステム部門)との意見もあった。

互換性の問題には賛否両論

 一方で、機能の一新に伴って、既存のOfficeとの互換性がなくなったり、制限される点については、アンケートでの賛否が分かれた。

 利用者の使い勝手には直接関係しないものの、WordやExcel、PowerPointといった主要製品でOffice 2007は、文書ファイルの標準データ形式をXMLに基づいたもの(拡張子はWordの場合「.docx」)に変更した。XML化することによって、ファイルの汎用性が高まり、「システム間の情報のやり取りもしやすくなるし、検索性が高まる」(横井本部長)という効果を狙った。

 その一方で、XML形式で保存した文書は、Office 2003以前の製品で閲覧・編集することができなくなった。Office 2007で作成した文書をOffice 2003などで利用するためには、あらかじめ旧製品でも利用可能なファイル形式を選んで文書を保存する必要がある。

 この点については、27.0%の企業がXML化を評価するのに対し、44.7%が互換性がないことを問題にしている。自由意見でも、「オープンなXMLになったことを歓迎する」(営業・販売課長)と、「互換性がなくなったことは致命的」(企画・調査・マーケティング担当)という意見が併存している。

 新たなユーザー・インタフェースについての評価も二分している。期待するが29.3%なのに対し、不安視するも28.8%いた。自由意見では、「利用者への教育を再度行う必要が出てくる」など不満を訴える声が多かった。

3代前のOfficeも過半数が利用

 企業が現在利用しているオフィス・ソフトは、「Microsoft Office 2003」が64.7%、「同Office 2000」が57.3%、「同Office XP」が49.8%となっている(図7、複数回答)。1999年に出荷した3代前のOfficeを使っているユーザーが6割近く残っている。

 「Office 2000/2003で何も困っていないので、長く使い続けたい」(情報システム部長)、といった回答が多く寄せられている。

 今のところユーザーの関心が高いとはいえないOffice 2007だが、新しいユーザー・インタフェースや、サーバー・ソフトを利用した情報共有など、全体として見れば有用な機能は多い。OSをXP以上にするなどの基盤整備が不可欠で、社員の再教育が必要になるなどの課題はあるが、環境さえ整えば導入を検討する価値はある。

表1●代表的なOffice 2007のクライアント・ソフトとスイート製品の構成

  :企業向け製品  VL :ボリュームライセンス

このほかOffice 2007には、作図ソフト「Visio 2007」やプロジェクト管理ソフト「Project 2007」、サーバー・ソフトの社内情報共有ソフト「SharePoint Server 2007」、

グループウエア「Exchange Server 2007」などが含まれる

図1●Office 2007の新ユーザー・インタフェース

図2●SharePoint Server 2007の主な機能強化点

図3●Exchange Server 2007が備えるコンプライアンス対応機能

図4●Grooveを使った共同作業の仕組み

図5●Office 2007に対する期待と、不満や問題点

調査概要:日経BP社の調査用Webサイト「Web?Res」を使い、2006年11月13日?11月21日にかけて調査を実施。有効回答数は310件

図6●Office 2007を導入する

計画の有無と、導入する理由

図7●現在利用しているオフィス・ソフト






マイクロソフト、Vista&オフィス、発売前に無料体験を提供

遠藤泰男(パソコンインストラクター) 2006/10/11

 マイクロソフトは、ウィンドウズVistaおよび2007オフィスの発売に先立ち、その魅力を実体験してもらう目的で、「アーリーエクスペリエンスセンター」と称してさまざまな取り組みを実施していくことにした。まず第一弾として、全国のマイクロソフトオフィシャルトレーニングスクール(MOTS)と協力して、無料の体験コースを十日から提供開始した。

 同社によると、現在展開中のベータプログラムの反響が日本でとくに高いために企画したもので、全世界のマイクロソフトでも初めての取り組みになるという。

 第一弾の「Vista&オフィス無料体験キャンペーン」は、MOTS所属のマイクロソフトオフィシャルトレーナー(MOT)が、Vistaおよびオフィスの新機能や基本的な使い方を体験できるカリキュラムを提供するというもの。実際にパソコンを操作し、Vistaで導入される新型GUI(グラフィカルユーザーインターフェース)「Aero」、やりたいことを直感的に操作できる「リボン」などの新機能を実際に使ってみることができる。講習時間は約三時間となっている。

 全国の百九校のMOTSで受講することができるが、インターネットからの予約が必要。期日は来年三月末となっている。

 詳しくはキャンペーンサイト(http://www.motpc.jp)まで。



特集2?これはイケる!オフィス2007?総論?ガラリと変わる操作性、新機能も満載?総論

遠藤泰男(パソコンインストラクター) 2006/06/24, , 日経PC21, 58?59ページ, 無, 2672文字     2ページ、673845バイト書誌情報類似検索印刷イメージを表示



2ページ、673845バイト



 毎日の仕事に欠かせないワードやエクセル、パワーポイントが、半年後に大きく様変わりする。「マイクロソフトオフィス」の最新版「オフィス2007」がついに登場するのだ[注]。

 今回のバージョンアップでは、「XP」や「2003」のときとは比較にならないほど、ソフトの画面や中身が大きく変更される。それだけに、「せっかく使い方を覚えたのに、また勉強し直さなくてはいけないのか」と心配するユーザーも多いだろう。確かに最初は戸惑うかもしれないが、新しい操作や機能に一度慣れてしまえば、従来版より確実に作業効率が上がる。変更点や使いこなしのコツをきちんと押さえ、今からしっかり準備しておきたい。

 五月二四日には、「ベータ2」と呼ばれる開発途上のテスト版が一般に公開された。今回は、このベータ2を基にして、オフィス2007の新機能や強化点を徹底的に解説しよう。

メニュー、ファイル形式を刷新

作図機能も大幅に強化

 最初に押さえておきたい"共通"の変更点が「操作性」「作図機能」「ファイル形式」の三つだ(図1)。

 ワードやエクセルを起動してまず驚くのは、画面の見た目が大きく変わっていること。「ファイル」「編集」...といったメニューが消え、ツールバーのボタンも違っている。オフィス2007では、メニューやボタンの構成が刷新され、「リボン」と呼ばれる新しい操作体系が導入された。基本操作が変わるのは、オフィスの誕生以来初めてのことだ(→60ページ)。

 また、ビジネス文書に必須のチャートやグラフなど、図表の表現力が格段に向上する。作図機能が大幅に強化され、見栄えのする文書やプレゼン資料が簡単に作れるようになる(→62ページ)。

 一方、ファイル形式も新しくなる。業務システムや他のソフトとの連携を容易にするために、「XML」という記述言語をベースにした新しいファイル形式が導入された(→64ページ)。データを再利用しやすくなるなど利点も多いが、従来版オフィスとの互換性に注意が必要になる(→66ページ)。

個別のソフトもパワーアップ

最大の目玉はエクセルの進化

 さらに、ワードやエクセルなど個別のソフトを見ても、さまざまな新機能が目白押しだ(図2)。

 とりわけ進化が著しいのがエクセル。これまで約六万五〇〇〇行だったシートのサイズは、一気に一〇四万行へと拡大する。「ページレイアウト表示」という、用紙の見た目のまま編集できるモードも新たに搭載した。「こんな機能があったら」というユーザーの希望を数多く実現しており、完成度は高い(→68ページ)。

 このほか、ワードは長編の論文やレポート作成に便利な新機能を搭載(→72ページ)。アウトルックはインターネット上の予定表サービスとの連携が可能になる(→73ページ)。パワーポイントでは、強化された作図機能が真価を発揮(→74ページ)。アクセスには初心者向けの導入画面が用意され、これまで敷居の高かったデータベース作成が、手軽に行えるようになる(→75ページ)。

 こうした新機能を試してみると、どのソフトも確実にパワーアップしていると実感できた。もちろん、「リボン」の操作性に慣れるまでは少し時間が掛かりそうだが、総合的に見れば、オフィス2007は"買い"と言える。

 なお現時点では、日本語版の個人向け製品構成は明らかになっていない。しかし、すでに発表されている企業向けライセンス製品を見る限り、パッケージ構成に大きな変更はなさそうだ(図3)。もちろん、最新版の日本語入力ソフト「IME2007」も付属する。IMEには、二回以上入力した単語を学習し、先頭の数文字だけで手早く入力できる「予測変換」機能が追加されている(図4)。発売は法人向けが一〇月、個人向けが来年一月の予定だ(図5)。

 次ページから早速、2007の詳細を具体的に見ていこう。

[注] マイクロソフトは、ワードやエクセルなど個人で使うソフトだけでなく、サーバーやグループウエアを含む30近くのソフトを"オフィス製品群"と位置付け、全体で「2007マイクロソフトオフィスシステム」と呼んでいる。本誌では、個人向けに販売されるオフィスパッケージ製品を念頭に「オフィス2007」と呼ぶことにする

【お知らせ】 日経BP社のパソコン情報サイト「日経パソコンオンライン」でも、オフィス2007の詳細情報を提供します「オフィス2007」特設サイト(6月26日オープン) http://pc.nikkeibp.co.jp/ss/office遠藤泰男(パソコンインストラクター) 2007/

第1部

「オフィス2007」で押さえたい3つの大きな変更ポイント

p60

図1 オフィス2007では、メニューやボタンの構成が刷新される。まずはこれに慣れることが先決だ。大きく進化するのが作図機能。チャートやグラフの表現力が格段に上がる。ファイル形式も変わるので、互換性には注意が必要だ

第2部

個別ソフトも大幅に機能強化、乗り換えのメリットは十分

p68

図2 ソフト別に見ても、新機能が目白押し。一番の目玉はエクセルだ。基本仕様が一気に拡張されたほか、「ページレイアウト表示」という新しい画面表示モードを搭載。「関数」も10年ぶりに追加される

オフィスプロフェッショナルプラス2007の構成

図3 企業向けに販売される「プロフェッショナルプラス」に含まれるソフト。個人向けパッケージの構成は現時点では未定だが、製品の構成に大きな変更はないようだ

「IME2007」も"予測変換"機能でより便利に

図4 日本語入力ソフトのIMEもエンジンを一新し、変換精度を向上させた。2回以上入力した単語は、先頭の数文字を入れて「Tab」キーを押すだけで、候補としてリスト表示される。携帯電話などでお馴染みの予測変換機能だ

「オフィス2007」の発売スケジュール(予定)

図5 発売は、企業向けライセンス製品が10月、個人向けパッケージは来年1月の予定。市販パソコンへのプリインストールも同時期で、「ウィンドウズビスタ」と合わせた形になる

開発中のテスト版「ベータ2」でオフィス2007を体験!

本誌では、マイクロソフトが無償配布している「オフィスプロフェッショナルプラス2007」のテスト版(ベータ2)を付録CD?ROMに収録しています。ただし開発途上のテスト版のため不具合を含むほか、インストール後にトラブルが発生した場合、パソコンを元の状態に戻せなくなる恐れがあります。普段お使いのパソコンとは別の環境でお試しいただくようお願いします。詳しくは93ページをご参照ください







特集2?これはイケる!オフィス2007?第一部?三つの変更点を押さえ、全体像を理解?第一部

遠藤泰男(パソコンインストラクター) 2006/06/24

操作性

ボタンを"タブ"で切り替えて選択

 オフィスの使い勝手を激変させる最大の変更が、新しい操作体系の「リボン」だ(図1)[注]。

 従来版のオフィスでは、画面の上端に「ファイル」「編集」「挿入」といった項目が並んでいて、例えば「編集」をクリックすると、「コピー」「貼り付け」などの項目がズラリとメニュー表示される。必要な機能はメニューから選ぶのが基本で、一部の機能はツールバーのボタンからも実行できた。

 ところが2007では、「ファイル」「編集」などのメニューは消えてなくなる。代わって登場するのが"タブ"。画面上端を見ると、メニューのあった位置には「ホーム」「挿入」「ページレイアウト」といったタブが並んでいる。タブをクリックして選ぶと、その下に表示されるボタンがそっくり切り替わる仕掛けだ(図2)。

 このように、タブを切り替えて必要なボタンを探す操作体系が「リボン」と呼ばれるもの。従来のメニューとツールバーを、タブという形で統合したイメージだ。

 ただし、例えば従来版の「挿入」メニューが「挿入」タブにそのまま置き換わったわけではない。「ホーム」タブには、コピー操作や文字の書式設定など、入力や編集に関するボタンが並ぶ。「挿入」タブには、表や図形、ヘッダーなどを挿入するボタン、「ページレイアウト」タブには、用紙の設定ボタンなどが配置されている。

 なお、保存や印刷といった最も基本的な機能は、従来と似たメニューとして残されている。画面左上隅にあるオフィスのロゴマークをクリックすると、従来版の「ファイル」メニューと同様の項目が表示される(図3)。

 リボンには、作業内容に応じて一時的に現れるタブもある。例えば「挿入」タブにある「図形」ボタンをクリックし、文書内に図形を挿入してみよう(図4)。すると、一番右端に「描画ツール」と書かれた「書式」タブが自動表示される(図5)。これは図形の書式に関する機能をまとめたタブで、図形が選択されているときだけ表示されるものだ。同様に、画像を選択したときは「図ツール」、グラフを選択したときは「グラフツール」のタブが現れる。

 リボン内のボタンをクリックすると、メニューや設定の一覧が開くものが多い。例えば図形を装飾したいときは、「図形のスタイル」欄で「その他」ボタンを押す(図6)。するとスタイルの一覧が開き、マウスで選択できる(図7)。便利なのは、一覧の中でマウスポインターを動かすと、図形がその場で変化し、設定を結果を確認しながら選択できること(図8)。従来のように、設定を試行錯誤する手間が省ける。

 リボン以外にも、文字を選択したとき現れる「ミニツールバー」も意外と重宝する。書式を変更するときに、マウスの移動距離を最小限に抑えられる(図9、図10)。

 ちなみに従来型の「右クリックメニュー」は、2007でも健在。そこから従来と同様の設定画面を開くことも可能だ(図11、図12)。

[注] 「リボン」は、ワード、エクセル、パワーポイント、アクセスと、アウトルックの一部で採用されている。その他のソフトは、従来型のメニューやボタンを使う。なお、リボンが採用されたソフトには、従来型のメニューやツールバーに戻すようなオプション設定は、用意されていない

メニューやボタンの構成がガラリと変わる!

図1 ワードやエクセルを起動してまず驚くのが、「リボン」と呼ばれる新しい操作画面。従来のように「ファイル」「編集」といったメニューがなく、「ホーム」「挿入」などの"タブ"が用意されている。これを切り替えて必要な機能を探すわけだ

"タブ"を切り替えて機能を選択

図2 リボンに用意されたタブをクリックすると、ボタンの一覧が切り替わる。これらのボタンをクリックし、必要な機能を選ぶ

「ファイル」メニューは「オフィス」ボタンに

図3 ウインドウ左上隅にある「オフィス」マークは、実はボタンになっている。クリックすると、ファイルの作成や保存、印刷などに関するメニューが開く。従来の「ファイル」メニューに相当する

選択対象に応じて"専用のタブ"を表示

図4 試しに図形を挿入してみよう。「挿入」タブを選び(1)、左端の「図形」ボタンをクリック(2)。開く一覧(ギャラリー)で図形を選び(3)、ドラグする(4)

図5 図形ができると、図形の書式設定にかかわる「書式」タブが「描画ツール」として自動表示される。画像なら「図ツール」、グラフなら「グラフツール」として専用のタブが現れる

結果をその場で確認しながら書式を変更できる

図6?図8 図形の見栄えは「図形のスタイル」欄で手早く変更できる。右下の「その他」ボタンを押すと(図6)、スタイルの一覧が開く(図7)。ポインターを当てるだけで、結果をプレビューできるので便利だ(図8)。クリックすると確定できる

文字の書式は「ミニツールバー」で手早く

図9、図10 文字を選択すると、右上に半透明の「ミニツールバー」が現れる(図9)。マウスを合わせると透明ではなくなり、その場でフォントやサイズなどを手早く変更できる(図10)

「右クリックメニュー」は従来のまま

図11 マウスの右ボタンで開く「右クリックメニュー」は従来通り。リボンの操作に迷ったら、ここから設定画面を開くのも手だ

図12 ワードの「オートシェイプの書式設定」画面は、従来版とほぼ同じ内容。細かい変更点だが、文字の上下中央揃えが可能になったのはうれしい。もちろん、設定画面によっては、内容が大きく変わったものもある

作図機能

図表や写真の表現力が豊かに

 オフィス2007の目玉の一つが、共通で使える作図機能だ。見栄えのするチャートや図表が、いとも簡単に作れるようになる。ワードでは一部機能が制限されるものの、エクセル、パワーポイントでは大幅に進化。グラフィックソフトも顔負けの彩りある作図が可能になる(図1)。

 例えば、従来版では「オートシェイプ」と呼ばれていた「図形」の表現力が格段にアップする。図形を作成するには、「挿入」タブで「図形」を選び、ドラグ操作で描けばよい(61ページの図4、図5参照)。図形を選択すると、「描画ツール」の「書式」タブで、さまざまなデザイン、効果を設定できる。「面取り」や「グロウ」、「反射」など、立体感を持たせたり、輝いた印象を与えたりと、一覧から効果を選ぶだけで、インパクトのある作図が可能だ(図2、図3)。一覧にマウスポインターを当てるだけで、結果をその場で確認しながら選べる点も、作業の効率化に貢献する。

 作図を終えた後で、やっぱり別の色合いに変えたいという場合も、一つずつ書式を変更する必要はない。ページ全体の設定を決める「ページレイアウト」タブを選び、「配色」を選択し直せばOKだ(図4)。オフィス2007では、「テーマ」という機能の中にあらかじめ配色の組み合わせパターンが用意されている。これを選ぶと、文書内の文字や図形の配色を、まとめて変更できる[注]。

 「スマートアート」と呼ばれる図表の自動作成機能も強力だ(図5)。従来版の「図表ギャラリー」を進化させたもので、一覧から図表の形を選ぶと、テキストの入力欄が現れる。そこに文字を入れるだけで図表が完成するというスグレモノだ(図6、図7)。もちろん、図形と同様、色合いや質感などをワンタッチで設定できる(図8)。プレゼン資料などに用いれば、相手を強く引き付けられること間違いない。

 デジカメ写真など、文書に挿入した画像に対しても、フォトレタッチソフトに引けを取らない特殊効果を設定できるようになる(図9)。フォトフレームのような枠を追加したり、立体化して鏡のように反射させたりと、さまざまな画像加工を楽しむことができる(図10)。写真をセピア調にするなど、色合いの変更も一覧から選ぶだけ(図11)。デザイン性に富む文書作りが可能になる。

 ちなみに、作図機能の強化に合わせて、グラフの表現力も驚くほど豊かになっている。ワードやパワーポイントでも、エクセルのグラフをそのまま利用できるので、効果は絶大だ(図12)。

[注] 図形の色を個別に設定していた場合は、手動で設定した色が優先され、自動調整されない

表現力が格段に上がった作図機能

図1 作図機能の強化もオフィス2007の目玉の1つ。特にエクセルとパワーポイントでは、図形に設定できるデザインのバリエーションが格段に増えた。しかも、操作は簡単だ

「面取り」などの特殊効果がワンタッチで

図2 「描画ツール」の「書式」タブで「図形の効果」をクリックすると、影、反射、面取りなど、思い通りの特殊効果を一発で設定できる

図3 「グロウ」を選ぶと、背後が輝いたようなイメージになる。なおワードでは、図形に従来版と同様の効果しか設定できない

「テーマ」の選択で色使いの変更も簡単

図4 「ページレイアウト」タブにある「テーマ」は、ファイル内のフォントや色の組み合わせを自動調整するもの。「配色」ボタンを押すと、全体の色合いをパターンから選んで変えられる

「スマートアート」でチャートを自動作成

図5 「SmartArt(スマートアート)」と呼ばれる図表作成機能を使うと、複雑なチャートの作成も簡単。ワード、エクセル、パワーポイントに共通の新機能だ

一覧から図表を選び、文字を入れればOK

図6 「挿入」タブで「SmartArt」ボタンを押すと、あらかじめ用意された図表の選択画面が開く。80種類の図表の中から、適切な形をクリックして選択し、「OK」を押す

図7 図表のひな型が挿入され、隣にテキストの入力欄が用意される。ここに文字を入れるだけで、図表内に文字が配置される仕掛けだ。文字のサイズも自動調整される

図8 配色や3Dなどの効果は、リボンに自動表示される「SmartArtツール」の「デザイン」タブと「書式」タブで設定できる。見栄えのするチャートを手早く作成できる

デジカメ写真も美しく配置

図9 写真にも、フォトレタッチソフト顔負けの効果を設定できるようになった。底面に反射させたり、フレームを付けたりと自在だ

リボンから効果を選ぶだけで瞬時に

図10 画像を挿入すると現れる「図ツール」の「書式」タブで、図のスタイルや効果を設定できる。フレームの追加や、底面に反射させる特殊効果もワンタッチだ

図11 同じ「書式」タブで、「色の変更」ボタンを押せば、写真をセピア調にするといった色合いの調整もすぐにできる

グラフの見栄えも大幅にアップ

図12 グラフの表現力も強化され、美しいグラフが手軽に作れるようになった。エクセルをインストールしてあれば、ワードやパワーポイントでも同じグラフが作れる

ファイル形式

ZIPで開けば中身が見える

 標準のファイル形式が変更される点も、オフィス2007の重要なポイント。従来版では、ワードのファイルに「doc」、エクセルのファイルに「xls」という拡張子が付くが、2007では「docx」「xlsx」などと、拡張子に「x」の文字が追加される(図1)。

 ファイル形式の変更は、従来版との互換性が問題になるため、本来は望ましくない(66、67ページ参照)。にもかかわらず、マイクロソフトがファイル形式を一新したのは、業務システムや他のソフトとの連携を容易にするためだ。

 新しいファイル形式の特徴は、「XML」という広く利用されたフォーマットをベースにしていること。XMLとは、文書の構造を"タグ"で示しながらデータを記述する言語。例えば住所データなら、「名前」「住所」「電話番号」などとタグを付けて保存することで、それぞれのデータが何を意味するものなのかを明確にできる。これにより、別のソフトで再利用する際も、適切なデータのやり取りが可能になる。データ自体は通常のテキスト形式なので、一般的なソフトで閲覧や編集ができる。

 オフィス2007では、こうしたXMLをベースとしたファイル形式が採用されたため、業務システムなどとデータの連携がしやすくなる。中身が"ブラックボックス"だった従来のファイル形式と比べ、活用の幅が広がるわけだ。

 さらに注目すべき点は、本文、ヘッダー、画像、グラフなど、文書内のパーツを別々に管理しながら、一つのファイルにまとめていること。これにより、ファイル内のパーツを一部だけ交換したり、取り出して再利用したりと、効率的にデータを活用できる(図2)。

 実はこの新ファイル形式は、標準的なZIPの圧縮ファイルとなっている。試しに、ファイルの拡張子を表示して、「zip」に書き換えてみよう。すると、通常のZIPファイルと同じように、中身を開いて確認できる(図3?図7)。

 これを応用すれば、文書内の画像だけを、別のファイルとして保存することも可能だ。文書ファイルの拡張子を書き換え、ZIPとして開けば、中の画像ファイルが簡単に取り出せる(図8?図11)。

 一般のユーザーにとって、XMLデータそのものを操作して活用することは難しい。だが、文書内の画像を取り出すといった操作は、従来版ではできなかったこと。新しいファイル形式の活用法として、覚えておいて損はない。

 なお、PDF形式でファイルを保存する機能も搭載する予定だったが、これは追加機能としての提供が検討されている(図12)[注2]。

[注1] 「挿入」タブの「図」ボタンから画像ファイルを挿入した場合。ただし、同じ操作で挿入しても、ビットマップ(BMP)形式の画像は、ファイル内で「PNG」という画像形式に変換される。またJPEG画像でも、他のソフトから「コピー」して文書に「貼り付け」した場合、「PNG」や「EMF」などの画像形式に変換されてしまう

[注2] PDFファイルの作成は、当初は標準機能として搭載される予定だった(本誌付録の開発途上版「ベータ2」でも、標準で搭載されている)。だが2006年6月時点では、製品版からPDF作成機能を削除し、インターネット経由で配布する追加機能の形にする方向で検討しているという

「XML」ベースの新しいファイル形式を採用

図1 オフィス2007ではXMLベースの新しいファイル形式が標準となる。拡張子の最後に「x」が追加された

ファイルの中身をパーツに分け、ZIP形式で圧縮

図2 ファイルの内部では、ヘッダー、本文、画像などが個別のパーツとして管理・保存される。文字や書式データはXML形式のテキストで記述されているため、再利用も容易。これらをZIP形式で圧縮したものが、一つのファイルになっている

ファイルの「拡張子」を表示する

図3 ウィンドウズXPの初期設定では、ファイルの拡張子は表示されていない。表示するには、フォルダのウインドウで「ツール」メニュー→「フォルダオプション」を選ぶ

図4 「表示」タブにある「詳細設定」欄で、「登録されている拡張子は表示しない」をオフにする。「OK」を押せば、拡張子が表示される

拡張子を「zip」に変えて中身を見る

図5、図6 試しにワード文書の拡張子「docx」を、「zip」に変えてみよう(図5)。するとZIPファイルの表示に変わる(図6)。これをダブルクリックすると...(→図7)

図7 ZIPファイルがフォルダとして開き、ワード文書の中身を確認できる。パーツを保存したフォルダやXMLファイルが多数格納されているはずだ。ちなみに図2左上に示したのは、「word」というフォルダの中身だ

特定のパーツだけを再利用

図8 作成済みの文書の中から、挿入された画像だけをファイルとして取り出したい〓〓。そんなときも、2007の新しいファイル形式なら簡単だ

ZIPファイルに直して画像を取り出す

図9 文書から画像を取り出すには、まずファイルの拡張子を変更してZIPファイルにしてしまう。ワードなら「docx」、エクセルなら「xlsx」という拡張子を「zip」に変更する

図10 ZIPファイルができたらダブルクリックして開く。ワードなら「word」、エクセルなら「xl」というフォルダの中の「media」というフォルダの中に、画像がファイルとして保存されている。これをドラグ・アンド・ドロップで取り出す

図11 JPEGの画像は、文書に挿入したときの状態で保存されているため、画像サイズや撮影日情報なども元データのまま。ただし、拡張子は「jpeg」に変わる[注1]

PDF形式での保存もサポート

図12 作成した文書からPDFファイルを作成する機能も追加される。マイクロソフトのウェブサイトから追加モジュールをダウンロードすると、PDF保存が利用できるようになる予定だ[注2]

従来版とのファイルの"互換性"は?

 ファイル形式が変わったと聞いて、やはり気になるのは従来版との"互換性"だろう。これまで作成したファイルが開けなくては元も子もないし、従来版を使い続けている人とファイルをやり取りできなくては困る。この点は、マイクロソフトも重々承知。従来版とのやり取りに問題が生じないよう、オフィス2007にはさまざまな工夫が施されている。

 まずは、オフィス2007のユーザーが、従来版のファイルを扱う場合を考えてみよう(図1)。

 例えば、従来版を使っている相手にファイルを渡したいときは、ファイルを保存する際に、従来版の形式を選べばよい(図2)。注意が必要なのは、2007の新機能で作成したデータ。従来版の形式で保存すると、失われてしまう恐れがあるからだ。その目安となるのが、保存するときに自動で開く「互換性チェック」の画面。失われるデータを一覧表示してくれる親切な機能だ(図3)。

 なお、データが失われる場合も、完全に消えてしまうケースと、従来版の機能に置き換わるケースがある。例えば2007の新機能で加工した画像は、編集できない一枚の画像に変換されるが、加工した結果は保持される。

 また、オフィス2007で従来版のファイルを開く場合にも、トラブルを未然に防ぐ仕掛けがある。2007の新機能を制限した「互換モード」に自動で切り替わるのだ(図4、図5)。

 例えば互換モードのワードで「スマートアート」を作成しようとすると、従来版の「図表ギャラリー」が開く(図6)。またエクセルの互換モードでは、シートのサイズが従来版と同じ六万五五三六行×二五六列になる。ユーザーが特別な注意を払わなくても、従来版に合わせたファイル作成ができるわけだ。もちろん、互換モードで開いた従来版のファイルを、2007形式に変換して保存し直すこともできる(図7)。

従来版のユーザーは

"互換パック"の導入で対応

 一方、従来版を使い続けているユーザーは、オフィス2007のファイルにどう対応すればよいだろう。普通に考えれば、2007形式のファイルを従来版で開くことはできないはずだ。

 そんな混乱を防ぐために、マイクロソフトは、オフィス2000から2003のユーザー向けに、2007のファイル形式に対応するための"互換パック"を提供する(図8)。ウェブサイトからダウンロードして組み込めば、従来版でも2007のファイルを開いたり、保存したりできるようになる(図9?図12)。

 ただし、2007の新機能を利用した部分は、従来版では再現できない場合がある。例えばエクセル2007で一〇万行まで入力したファイルは、従来版では六万五五三六行で切られてしまう。

 そこで互換パックは、2007形式のファイルに失われるデータがあるときに、自動で「読み取り専用」で開く仕掛けになっている(図13)。これにより、データが欠落した状態でうっかりファイルを上書きし、二度と取り戻せなくなるようなトラブルが防げる。

 オフィス97以降2003までは、ファイルは基本的に同じ形式が踏襲されてきた。ところが、2007では従来と全く異なる新しいファイル形式が採用される。他人とファイルをやり取りする際は、細心の注意を払おう[注]。

[注] XMLベースの新しいファイル形式が採用されたのは、ワード、エクセル、パワーポイントの3つ。互換パックが適用されるのは、これら3つのソフトのみだ。ちなみに、アウトルックは2003と同じ形式のpstファイルを採用している。またアクセスは、2007独自のファイル形式に変更されている

オフィス2007を使っている場合

図1 オフィス2007では、2003以前で作成したファイルを直接開いて編集できる。また従来のファイル形式でも保存できるので、ファイルを渡す相手が2003以前の場合も安心だ。ただし、新機能の一部は失われてしまうので注意

従来のファイル形式で保存する

図2 2007で作った文書を従来の「97?2003形式」で保存するには、「オフィス」ボタン(1)のメニューで「名前を付けて保存」→「97?2003形式」を選ぶ(2、3)

図3 「互換性チェック」画面が開き、97?2003形式で保存した場合に失われるデータを一覧表示する。「検索」をクリックすると、該当データへ移動できる

従来ファイルを開くと、自動で「互換モード」に

図4 2007で、97?2003形式のファイルを開いてみよう。「オフィス」ボタンから「開く」を選び、ファイルを選択すると...

図5 画面上端に「互換モード」と表示され、一部機能が制限されたモードに自動で切り替わる。例えばワード2007では、新機能「スマートアート」が従来の機能で代用される(→図6)

図6 ボタンをクリックすると、従来版と同じ「図表ギャラリー」が開く。こうすることで、従来の形式で上書き保存した場合に失われるデータを最小限に抑えられる仕掛けだ

2007形式にファイルを変換することも

図7 従来版のファイルを、2007形式に変換して保存することも簡単。ファイルを開いた状態で「オフィス」ボタンを押し、「変換」を選べばよい

2003までの旧バージョンを使っている場合

図8 オフィス2003以前のバージョンでは、2007の新しいファイル形式にそのままでは対応できない。しかし2000?2003の場合は、"互換パック"を導入することで、2007形式のファイルも扱えるようになる

"互換パック"をダウンロード

図9 「Compatibility Pack」(互換パック)はマイクロソフトのウェブサイトからダウンロードできる。ただしオフィス2000以降が対象だ(画面はベータ版)

旧バージョンで2007形式を開く

図10 互換パックを導入した後、「ファイルを開く」画面から2007形式のファイルを選ぶと...

図11 「ファイルを変換しています」と表示され、しばらく待つとファイルを開くことができる

図12 図形やグラフの書式などは、従来版で実現できる範囲で自動調整される。2007形式のまま編集して上書き保存することも可能だ

新機能を含むファイルは「読み取り専用」に

図13 旧バージョンで対応できない機能を含むファイルは、元データが損なわれないように自動で「読み取り専用」となる。その際、対応できなかった機能を表示して注意を促してくれるので、きちんと確認しておこう







特集2?これはイケる!オフィス2007?第二部?注目の新機能をソフト別に解説?第二部

遠藤泰男(パソコンインストラクター) 2006/06/24,



強化点が目白押し! 過去最大の進化

 ここからはエクセル、ワード、アウトルック、パワーポイント、アクセスという五つの主要ソフトについて、個別に新機能を見ていく。先頭バッターはエクセル2007。今回のバージョンアップで最大の進化を遂げたソフトだ。

 まず驚くのは、その巨大なシートサイズだろう。行数は一〇四万八五七六行、列数は一万六三八四列へと拡大されている(図1)。

 エクセルをデータベースソフト代わりに使い、顧客情報や売上データを管理している人は意外と多い。その際、従来版のエクセルでは、最大六万五五三六行というシートの行数がネックとなることがあった。例えば一〇万人の顧客を持つ会社では、一つのシートで顧客を一括管理できない。「データが数万件を超えたらアクセスを使う必要がある」というのが、これまでの常識だった。

 これがエクセル2007では、一〇四万件まで対応可能になる。列数も格段に増えるため、実用的なデータベースを手軽に構築できるようになるはずだ。

 シートサイズの拡大により、アクセスなど専用ソフトが管理するデータベースを、そっくりエクセルに取り込めるようになる点も見逃せない。データの集計や分析は、エクセルに取り込んでから行うほうが簡単。しかし従来はシートサイズに制限があり、エクセルに取り込めるデータベースは限られていた。エクセル2007では、そのような心配がなくなる。

 仕様が拡張されたのは、シートサイズだけではない。セルに表示できる文字数、利用できる色数、「元に戻す」が有効な回数など、大幅にアップした点が目白押しだ。どれもが従来版では"弱点"と言われていたもので、2007の開発者が、ユーザーの意見を幅広く取り入れ、不満の解消に努めたことがうかがえる(図2)。

「ページレイアウト表示」で

印刷イメージのまま編集

 従来版にない機能も数多く追加されている。一番の注目は「ページレイアウト表示」という新しい画面表示モードだ(図3)。

 画面をページレイアウト表示に変えるには、リボンの「表示」タブで「ページレイアウト表示」ボタンを押す。またはウインドウの右下隅にある表示モードの切り替えボタンで「ページレイアウト表示」をクリックする。すると、画面上に"用紙"のイメージが現れ、上端と左端にサイズを表す目盛り(ルーラー)が表示される。まるでワードの「印刷レイアウト」モードのように、用紙の中に表を描く感覚で、シートの編集が可能になる。用紙にはセルのマス目が表示されているが、これは標準で印刷されない。従来版では、「作成した表を印刷してみると、右端の列が次のページに溢れていた」という失敗がよく起きたが、2007の「ページレイアウト表示」なら、どこまで用紙に収まっているのかが一目瞭然だ。

 また、列の幅や行の高さをルーラーを使って調整できるのも便利。ルーラーの単位は、ミリ、センチ、インチの中から好きなものが選べる[注1]。列幅を変更する際は、ミリ単位などで幅を表してくれるので、細かな調節が可能だ。もちろん一〇〇パーセント正確なサイズとは言えないが、目安としては十分活用できる(図4)。

 この「ページレイアウト表示」が従来の「印刷プレビュー」と異なるのは、セルの入力や作図など、通常の編集作業がそのまま行える点(図5)。また、用紙上端の余白部分をクリックすると、ヘッダーの入力や設定がその場で行える(図6)。ヘッダー部分をクリックすると、リボンに「ヘッダー/フッターツール」が自動表示され、日付やファイル名も、ボタン一つで手早く挿入できる。

 用紙のイメージで編集できるとなれば、やはり気になるのは「画面の見た目通りに印刷できるか」という点だろう。従来版では、画面ではピッタリ収まっていた文字が、印刷では溢れてしまうケースが少なくない(図7)。

 実際に試してみると、「ページレイアウト表示」で列幅などを調整すると、実際の印刷でもほぼ見た目通りになった(図8)。ただし過信するのは危険だ。マイクロソフトによると、「ページレイアウト表示」はあくまで標準の編集画面の延長で、「印刷プレビュー」のように印刷結果を忠実に再現するものではないという。標準の編集画面ほどではないが、画面と印刷結果が異なるケースもあるようだ。やはり「印刷プレビュー」での確認も必要だ[注2]。

強化された「条件付き書式」

「色」を基準に並べ替えも

 セルの値に応じて書式を自動で切り替える「条件付き書式」も大幅に強化された。従来版では、セルや文字の色を変えて強調表示することくらいしかできなったが、セルの中にグラデーションで"横棒グラフ"を表示し、数値の大小を視覚的に表す機能などが追加されている(図9)。セルにアイコンを表示して数値の大きさを示すこともでき、赤信号や青信号のマークで示したり、矢印の向きで表現したりと、書式のバリエーションが広がった(図10)。

 従来版では関数を組み合わせないと実現できなかった「上位○番目までを赤色に塗る」といった設定も、2007ではメニューを選ぶだけでOK(図11、図12)。もちろん今までと同様の方法で「セルの値が?以上」などと条件を指定することもできる(図13、図14)。うれしいのは、従来は三つだった条件の数が、無制限になったこと。四色以上の色分けも、一発で設定可能だ(図15、図16)。

 「並べ替え」も便利になった機能の一つだ。「ジャンル別に色分けした表を、色を基準にして並べ替えたい」といったケースにも、難なく対応できるようになる(図17)。従来版にはセルや文字の「色」を判定する機能がなかったが、2007では「ユーザー設定の並べ替え」を選ぶことで、色による並べ替えを指定できる(図18)。同様に、データの抽出を行う「フィルタ」機能でも、「赤色のデータだけを抽出する」といった操作が可能だ(図19)。

 さらに新しい関数も追加されている。関数の追加は、エクセル97以来、およそ一〇年ぶり。全部で一二個あるが、とりわけ便利なものを紹介しておこう(図20)。

新しい「関数」も登場

複数条件での集計も一発

 従来版にも「条件に合うデータを数える」「条件に合うデータを合計する」という関数はあった。COUNTIF関数とSUMIF関数だ。2007で追加されたAVERAGEIF関数は、これらの関数の仲間。「条件に合うデータを平均する」という働きをする。

 それ以上に重宝しそうなのが、COUNTIFとSUMIFの"複数形"、COUNTIFS関数とSUMIFS関数だ。COUNTIFやSUMIFには、「条件を一つしか指定できない」という限界があり、「複数の条件に合うデータを集計するにはどうすればよいか?」というのが、関数関連の質問として非常に多かった。この悩みを解消するのがCOUNTIFSなどで、複数の条件を順番に並べて、該当データを集計できるようになる(図21)。

 ちなみに、関数の入力も簡単になった。「=coun」などと関数名を入れ始めると、その綴りで始まる関数を候補として自動表示してくれる(図22)。

[注1] ルーラーの単位を変えるには、「オフィス」ボタンでメニューを開き、一番下にある「Excelのオプション」ボタンを押す。開く画面の左側で「詳細設定」を選び、「表示」欄の「ルーラーの単位」を切り替える

[注2] 「印刷プレビュー」を実行するには、「オフィス」ボタンのメニューで「印刷」の右端にある「▲」をクリックし、「印刷プレビュー」を選ぶ

シートのサイズが巨大に!行数は104万

図1 エクセルは基本仕様が大幅に拡充された。まず驚くのはシートのサイズ。104万行×1万6000列もあれば、かなり大規模なデータベースが扱える

文字数の制限や「条件付き書式」の悩みも解消

図2 セルに表示できる文字数や、元に戻せる回数も増加。従来は三つだった「条件付き書式」の数も無制限になる

印刷イメージのまま編集が可能に

図3 リボンを「表示」タブに切り替えて「ページレイアウト表示」をクリックすると、印刷イメージの状態でシート編集が可能なモードに切り替わる。待望の"見た目通りに印刷"を実現するモードだ

行や列の幅は「ルーラー」で確認できる

図4 ページレイアウト表示では、シートの上端と左端に目盛り(ルーラー)が現れ、印刷時のサイズを確認できる。列幅を変えるときは、ミリ単位などで幅が表示される

図5 ページレイアウト表示でも、通常のシート編集が可能。「オートSUM」を押せば合計の計算式が入る

ヘッダーやフッターも直接編集

図6 用紙の上端部分をクリックすると、ヘッダーを直接編集できる。リボンに現れる「ヘッダー/フッターツール」のタブで、日付や時刻を自動挿入できる

従来版では画面と印刷の違いに大慌て

図7 従来版の標準画面では、画面上で文字がピッタリ収まっていても、印刷ではセルや図形から文字が溢れてしまい調整に苦労した

「ページレイアウト」なら画面通りに印刷

図8 2007の「ページレイアウト表示」で列の幅や図形の大きさを調整すると、ほぼ見た目通りに印刷できる。完全に一致するとは言い切れないが、目安としては十分だ。ただし、最終確認には「印刷プレビュー」を使おう[注2]

「条件付き書式」が強力な分析ツールに

図9 「条件付き書式」も機能強化が著しい。「ホーム」タブにある「条件付き書式」ボタンを押し、メニューから「データバー」を選択。これだけで、選択範囲の数値を自動で判定し、横棒グラフのようにセルを塗り分けられる。数値の大きさを一目で比較でき、データ分析がしやすくなる

青信号や赤信号、矢印マークで数値を表現

図10 「条件付き書式」ボタンを押して「アイコンセット」を選ぶと、赤、黄、青の信号や矢印のマークをセルに表示して、数値の大きさを表現できる。アイコンで分ける数値の大きさを細かく指定することも可能だ

従来型の「条件付き書式」も設定が簡単に

図11 「上位10番目までを赤色に塗る」といった設定も簡単にできるようになった。「条件付き書式」のボタンで「上位/下位ルール」→「上位N項目」を選ぶ

図12 開く画面で項目数と書式を指定すれば、その場で色が変わる。従来は関数式を立てて設定する必要があったが、2007ではワンタッチでOKだ

4つ以上の条件にも対応

図13 設定画面を開いて細かな条件を指定するには、「条件付き書式」→「新しいルール」を選ぶ

図14 あらかじめルールの種類がいくつか用意されているが、条件の指定方法は従来版と同様。「書式」ボタンを押して適用する書式を指定する。ちなみに表示形式も指定できるようになった

図15 図13のメニューで「ルールの管理」を選ぶと、条件付き書式の管理画面が開く。同時に3つ以上の条件を設定できるようになったうえ、優先順位も入れ替えられるようになる

図16 平均気温の一覧表に、気温別の条件付き書式を設定した。七色の塗り分けも簡単だ

「色」を基準にした並べ替えもできる

図17 「並べ替え」も強化された機能の1つ。従来は並べ替えの基準に3項目しか指定できなかったが、2007では64項目まで可能に。またセルや文字の「色」を基準に並べ替えられるようになった

セルの色を選択し、並べ替えの順序を指定

図18 「ホーム」タブにある「並べ替えとフィルタ」ボタンを押し、開くメニューで「ユーザー設定の並べ替え」を選ぶ。表示された設定画面で「並べ替えのキー」を「セルの色」に指定すると、「順序」欄で色を選択し、並べ替える順番を指定できる

「色フィルタ」で特定の色に塗ったデータを抽出

図19 データの抽出を行う「フィルタ」機能でも、色を判定できるようになった。「並べ替えとフィルタ」のメニューから「フィルタ」を実行し、表の上端に付く「▼」ボタンのメニューから「色フィルタ」を選ぶ

複数条件に対応した新関数も登場

図20 条件に合うデータを合計するSUMIF関数は従来からあったが、その"AVERAGE版"が登場。またSUMIFやCOUNTIFでは条件を1つしか指定できなかったが、これらの"複数条件対応版"も追加された

COUNTIFS関数で、条件を2つ指定して数える

図21 COUNTIF関数では「範囲、検索条件」という2つの引数を指定したが、COUNTIFS関数では、これらを条件の数だけ繰り返して指定する。すると「性別が女」かつ「年齢が30歳以上」などと条件を組み合わせて、データを数えられる

入力した綴りを基に、関数名をリスト表示

図22 関数の入力に便利な新機能もある。「=」に続けて関数名を入れ始めると、同じ綴りで始まる関数を候補としてリスト表示する。上下キーで選んで「Tab」キーを押せば、関数名を自動入力できる仕掛けだ

論文やレポートの作成に威力を発揮

 ワード2007には、長編の論文やレポートの作成に便利な機能が新たに追加された(図1)。

 一つは「表紙」の作成機能。「挿入」タブの「表紙」をクリックしてひな型を選ぶと、それが文書の先頭に自動挿入される。タイトルや著者名を入れるだけで、表紙を手早く仕上げられる(図2)。

 数学や技術系の論文などに必須の「数式」の作成も簡単になる。従来版では「数式エディタ」という付属ツールを使って作成していたが、2007では標準機能となり、「挿入」タブの「数式」ボタンから作成を開始できる(図3)。

 また論文では、書籍や他の論文を"参考資料"として引用することが多い。こうした引用文献の管理も楽になる。引用個所に出典などを入力する際、文献情報を登録しておこう。すると論文の末尾などで、参考文献のリストを自動で作成できる(図4?図6)。

 このほか、文書を「原稿用紙」の体裁で印刷する機能も強化されている。従来版では、先に原稿用紙のテンプレートを開き、そこに文字を入力していく必要があったが、ワード2007では、作成済みの文書をワンタッチで原稿用紙の体裁に組み直し、印刷できるようになった(図7)。

論文やレポート作成に便利な機能を追加

図1 ワード2007は、表紙の作成機能などレポートや論文の作成に便利な機能を搭載した。複雑な数式も簡単に描けるようになる

ひな型を選ぶだけで表紙を自動作成

図2 「挿入」タブの「表紙」ボタンをクリックし、一覧から表紙のひな型を選択。すると、文書の先頭に自動挿入され、題名などを入力するだけで表紙が作れる

「数式」の作成機能を標準で搭載

図3 「挿入」タブで「数式」をクリックすると、数式作成用のタブが現れる。作成した数式をパーツとして登録し、使い回すことも可能だ

「参考資料」の管理が楽に!文献一覧も自動作成

図4 文献の引用個所では、「参考資料」タブの「引用文献の挿入」→「新しい資料文献の追加」を選択。文献の登録画面で著者名やタイトルを入力する

図5 文書内には、引用を示す著者情報などが自動入力される。この部分は、文献情報の入力エリア(フィールド)として扱われる

図6 同様の操作で引用文献を登録していくと、論文の末尾などに文献一覧を自動作成できる。「文献目録」ボタンを押して「文献目録の挿入」を選べばOKだ

入力済みの文書を「原稿用紙」に変換して印刷

図7 従来のワードでも原稿用紙を作成できたが、事前に原稿用紙のテンプレートを開き、そこに文字を入力していく必要があった。ワード2007では、「ページレイアウト」タブの「原稿用紙設定」を押すだけで、作成済みの文書を原稿用紙に自動変換できる

RSSに対応、予定表のネット連携も

 アウトルック2007の基本画面は、2003とあまり変わらない。ただ、直近の予定や仕事を表示する「ToDoバー」が追加され、メールを読みながらでも次の予定を確認できるようになった(図1)。また「RSS」[注]の購読に対応し、ウェブの更新情報や要約を、自動で取得できる。

 面白いのは、メールや予定の編集画面にだけ「リボン」が採用されたこと。メール本文の作成機能はワードと共通になる(図2)。

 インターネット上に予定表を保存できる点も注目。マイクロソフトのウェブサイト内にカレンダーが用意され、アウトルックの予定表と同期。別のパソコンから予定を見たり、グループで共有できる(図3?図5)。ネットに公開されたイベントの予定表を取り込むことも可能だ(図6、図7)。

[注] RSS(Rich Site Summary)は、ウェブサイトの見出しや要約を記述して配信するフォーマットとして広く利用されているもの。「RSSリーダー」と呼ばれるソフトやRSS対応のブラウザー、メールソフトを使うと、サイトの更新状況を自動で取得し、いちいちユーザーがサイトにアクセスしなくても更新を確認できるようになる

RSS購読に対応し、予定や仕事も見やすく

図1 アウトルック2007の画面は、2003とさほど変わらない。新たに「ToDoバー」が用意され、直近の予定や仕事が一目でわかるようになった。また「RSS」に対応し、新着ニュースを自動でチェックできる

メールや予定の作成画面は「リボン」を採用

図2 電子メール、予定、連絡先、仕事の作成画面では「リボン」を使って操作する。なおメールの編集機能はワードと共通になった

予定表をネット上で共有

図3 マイクロソフトのウェブサイト「オフィスオンライン」との連携も強化された。ネット上のカレンダーと予定表を同期できる(→図4)

図4 ネット上のカレンダーと同期する期間や、公開するユーザーなどを設定。なお、利用するには事前の登録が必要だ

図5 公開した予定表は、オフィスオンラインのサイトで閲覧できる(画面は開発中の英語版)。外出先のパソコンから閲覧したり、友人と予定を共有したりできる

無料のイベント情報を予定表に取り込む

図6 ネット上で公開されている無料の予定表をダウンロードしてアウトルックに取り込むことも可能。例えばオフィスオンラインのサイトで「サッカーワールドカップ」を選択すると...

図7 アウトルックにワールドカップの試合日程が取り込まれた。個人の予定表とタブで切り替えたり、重ねても表示できる

見栄えのするスライドをワンタッチで

 オフィス2007の新しい操作体系「リボン」や、大幅に強化された作図機能は、パワーポイント2007で最も威力を発揮する。

 例えば「デザイン」タブにある「テーマ」を使うと、一覧からデザインを選ぶだけで、誰にでも見栄えのよいスライドが作れる。テーマの一覧を開いてマウスポインターをかざせば、デザインの適用結果を確認しながら選択できるので便利だ(図1)。選んだテーマについて、色合いだけが気に入らない場合は、「配色」ボタンをクリックして、色の組み合わせを変更すればよい(図2)。

 選択したテーマや配色は、ワードやエクセルのデータを再利用するときにも有効。エクセルで作成したグラフをコピーして、パワーポイントに貼り付けると、スライドのテーマや配色に合わせて、自動で書式を変更してくれる。自動的に統一感のあるスライドが作成できるわけだ(図3、図4)[注]。

 新しい図表の作成機能「スマートアート」も、パワーポイントならではの使い方が可能だ。「ホーム」タブの「テキストをSmartArtグラフィックに変換」ボタンを使うと、単なる個条書きを一発で図表に変換し、見やすいスライドに仕上げられる(図5、図6)。

[注] エクセル上で、グラフの色を個別に設定していた場合は、手動で設定した色が優先され、自動調整されない

彩りのあるスライドを手早く作成

図1 パワーポイント2007は、「リボン」に用意されたさまざまなツールを使って見栄えのするスライドが作れる。例えば「デザイン」タブで「テーマ」を選ぶだけで、背景やフォントなどを自動設定できる

スライドの「配色」を手早く変更

図2 「デザイン」タブの「配色」ボタンを押すと、色の組み合わせパターンが示される。スライドを好みの色合いに一発で変えられる

エクセルグラフの色調も自動で修正

図3 エクセルやワードとの連携機能も強化された。例えば、エクセルで作成したグラフを「コピー」してパワーポイントに貼り付けると...(→図4)

図4 スライドに設定された「テーマ」や「配色」に合わせて、グラフの色調が自動で変わる。違和感のないスライドに仕上げられる[注]

個条書きを「図表」に一発変換

図5 重宝するのが、オフィス共通のスマートアート機能。個条書きを選択して「テキストをSmartArtグラフィックに変換」を押すと...(→図6)

図6 個条書きを自動でスマートアートに取り込み、一発で図表に変換できる。配色やサイズを調整すれば、見やすいスライドを手早く完成できる

画面構成を一新し、初心者でも簡単に

 アクセス2007は、画面の構成から大きく変わっている。従来はウインドウで表示されたテーブルやフォームは、タブで切り替えて表示する形になる(図1)。

 初心者が戸惑いがちなデータベースの作成手順を簡単にしたのも特徴。アクセスを起動すると自動で「作業の開始」画面が開き、ファイル名を付けるだけでデータベースの作成に移れる(図2、図3)。テーブルの作成も、従来のような"設計"手順が不要で、エクセルのシートに表を作る感覚で、すぐにデータを入れられる(図4?図6)。フォームもボタン一つで作成でき、入力欄の配置も調整しやすくなった(図7、図8)。

画面の構成が大きく変わる

図1 画面構成が大きく変更されたのがアクセス。従来の「データベースウインドウ」は消え、左側にオブジェクトを一覧。テーブルやフォームをタブで切り替えて表示する形になった

データベース作成の最初の手順が簡単に

図2 起動すると、最初に「作業の開始」画面が開く。「空のデータベース」を選んでファイル名を付け、「作成」ボタンを押す

図3 白紙のテーブルが自動で用意され、エクセルのようにすぐにデータを入力できる

入力内容に応じて「データ型」を自動認識

図4 テーブルの上端にある「新しいフィールドの追加」をクリックし、フィールド名を入力。表を作る感覚でテーブルが作れる

図5 実際のデータを入れていくと、日付なら「日付/時刻型」のように「データ型」を自動で認識する。リボンに現れる「データシート」タブにはデータ型の指定欄があり、その場で選び直すこともできる

図6 「日付/時刻型」と認識されたフィールドには、自動でカレンダーを開くボタンが用意される(図5)。マウスで日付の選択が可能だ

フォーム作成も一発! 編集画面もわかりやすく

図7 テーブルを基にフォームを作成するのも簡単。リボンの「作成」タブで、「フォーム」ボタンを押せばよい

図8 フォームが自動作成され、テーブルの各フィールドが入力欄として並べられる。入力欄のサイズもドラグ操作で手軽に変えられる。従来の「デザインビュー」に比べ、操作がわかりやすい





トピックス?新製品?次期MSオフィスは「2007」 日本でも今年末には発売か?新製品

遠藤泰男(パソコンインストラクター) 2006/03/24

 米マイクロソフトは二月一五日、開発名「オフィス12」と呼んでいた次期オフィスの名称や製品構成を発表した。米国では今年末までに発売する予定で、総称は「2007マイクロソフトオフィスシステム」。個別のパッケージは「オフィスプロフェッショナル2007」「オフィススタンダード2007」「ワード2007」「エクセル2007」といった呼び名となる。日本での製品構成や発売時期は未定だが、ほぼ同時期の発売になると予想される。

 「オフィスシステム」という名称の通り、次期オフィスは企業内の"システム"として使うことを念頭に置いた新機能が目白押しだ。「オフィス=文書作成ソフトではない。ソリューションやサービスも含めてオフィス」(米マイクロソフトのインフォメーションワーカービジネスグループ沼本健ゼネラルマネージャ)というのが同社の考え方。サーバーソフトを含めて三〇近くの製品が、オフィス製品群として発売される。

 こう聞くと、ワードやエクセルしか使わない個人ユーザーには無縁とも思われるが、そうでもない。

 新版のワードやエクセルには、「リボン」と呼ばれる新しい操作体系が採用される。従来のようなメニューではなく、「タブ」を切り替えて機能を選択するものだ。図形を選択すると、図形関連の機能を集めたタブが自動表示されるなど、必要な機能がすぐに呼び出せるように配慮したという。使い勝手が大きく変わるわけだ。

 ファイル形式も「XML」という標準のデータ記述言語を基にしたものに刷新される。中身がブラックボックスだった従来のファイル形式に比べてデータ構造が明確なため、「文書内の画像だけをファイルとして取り出す」といった操作が簡単になる。ソフト間での連係もしやすくなるという。データはファイル内で圧縮されるので、ファイルサイズが小さくなるのも利点。PDFへの保存機能を標準で搭載する点も注目に値する。

 個々の製品を見ても、エクセルのシートが約六万行から約一〇〇万行に拡張されるなど、大幅な機能強化が見られる。この一〇年で最大のバージョンアップとなることは間違いない。(田村 規雄)

メニューやボタンの操作方法を大幅に変更。ファイル形式も刷新

ワード、エクセル、アクセス、パワーポイントでは、「リボン」と呼ばれる新しい操作ボタンが採用される。目的ごとにまとめらたボタンを「タブ」で切り替える。図形を選ぶと、図形用のタブが自動表示される

マイクロソフト、ウイルス対策ソフト、ビスタと同時発売。

2006/12/05

 マイクロソフト日本法人(東京・渋谷)は四日、ウイルス対策ソフト「ウィンドウズ・ライブ・ワンケア」=写真は画面例=を来年一月三十日から正式出荷すると発表した。次期基本ソフト(OS)「ウィンドウズ・ビスタ」の個人向け版と同時発売になる。

 ワンケアは同社初のウイルス対策ソフト。ウイルスやスパイウエアの検知駆除機能に加えて、パソコン教室の状態を正常に保つ機能を提供する。ハードディスク上のデータ配置を最適化して性能を向上させる機能やデータをバックアップする機能も備えている。

 価格は店頭で販売するパッケージ版が六千五百円、同社のウェブサイトではオンライン版を五千五百円で販売する。一本でパソコン三台まで利用できる。

遠藤泰男(水・ミネラルウォーター評論家&パソコンインストラクター)



課題も残る基本ソフト更新

2006/12/01

 米マイクロソフトが三十日、企業向けに新しい基本ソフトの「ウィンドウズ・ビスタ」を世界で同時発売した。家庭向けは来年一月末の発売予定で、五年ぶりの改定となる。基本ソフトの更新はパソコンなどのIT(情報技術)需要を押し上げると期待されるが、一方で従来製品に対するサポートなど利用者の立場に立った販売を展開してほしい。

 同社が発売したのは基本ソフトのほか、ワープロや表計算などの統合ソフト「オフィス」、それに企業向けのサーバー用ソフトなど。主要製品を一新したのは、パソコンブームの火付け役となった一九九五年の「ウィンドウズ95」の発売以来、十一年ぶりだ。発売が予想より遅れたこともあり、市場での期待は大きい。

 新基本ソフトの最大の特徴は、セキュリティー機能の強化と操作性の向上だ。画面を三次元メニューで表示したり、記憶装置にある様々な情報ファイルを簡単に検索したりできるようにした。現行の基本ソフトを更新するには二万円近い費用がかかるが、ウイルスやフィッシング詐欺なども防げるようにしたという。

 新基本ソフトを巡っては、欧州連合(EU)の欧州委員会が「技術情報の開示が不十分」として、EU競争法に照らし、制裁金を求めている。使い勝手を高めようと音楽・映像再生ソフトなどを統合したためだ。競合ソフト会社とは個別交渉し、発売は問題ないとしているが、市場支配力は依然として高いだけに、開示要求には応える必要があろう。

 また旧製品に対するサポートにも最大限配慮すべきだ。マイクロソフト側は、企業向け製品は十年間、家庭向けは五年もしくは新製品の登場から二年間はサポートするとしている。現行の「ウィンドウズXP」の家庭版は二〇〇九年一月末で打ち切られる計算になるが、教育現場などでも家庭版が使われていることを考えると何らかの措置が求められる。

 基本ソフトの更新がなかった五年の間に米検索サービス大手のグーグルが台頭するなど、IT市場の勢力図も大きく変わった。どれだけの利用者が更新するのかマイクロソフトにも未知数の部分があるが、基本ソフトという情報基盤を提供する以上はきちっとした対応を求めたい。

遠藤泰男(水・ミネラルウォーター評論家&パソコンインストラクター)





「ビスタ」企業向け販売開始、MS日本法人社長に聞く、2―3年後は主流に。

2006/12/01

 米マイクロソフトは三十日、次期基本ソフト(OS)「ウィンドウズ・ビスタ」と業務ソフト群の新版「オフィス2007」の企業向け販売を開始した。同社の屋台骨を支える二製品の新版を同時に発売するのはウィンドウズ95以来十一年ぶりだけに力が入る。日本法人のダレン・ヒューストン社長に見通しを聞いた。

 ――OSの新版は五年ぶりになる。

 「確かに非常に時間がかかった。だが、その分テストに十分な時間を割くことができた。ビスタは完成度の高いOSになったと確信している。セキュリティーにも自信がある。パートナー各社の協力によって既存ソフトも問題なく動作するはずだ。企業は修正版の登場を待たず、すぐにビスタを導入してほしい」

 「過去五年でパソコン教室のCPU(中央演算処理装置)能力やハードディスク容量は十倍になった。ビスタとオフィス新版はこの進化したハードの能力を完全に引き出し、インフォメーションワーカー(知的労働者)の生産性を劇的に高めることができる。例えば平均的な知的労働者は年百時間程度を情報検索に費やしているが、ビスタの検索機能を使えばこの時間を大幅に短縮できる」

 ――ビスタへの移行に慎重な企業も多い。

 「パソコン買い替えのタイミングでビスタに移行する企業が多いはずだ。発売直後に一斉に企業がビスタを入れるとはもともと考えていない。パートナー各社の力を借りて、ビスタとオフィス新版の魅力を継続的に企業に訴えていく」

 「悲観はしていない。ビスタへの移行は過去のOSよりもスムーズに進むだろう。すでに五十七の企業・組織がビスタやオフィス新版を早期採用する意向を表明している。この数はXPのときの五倍以上だ。二―三年後にはパソコン教室の半数以上はビスタ搭載機になるとみている」

 ――来年一月三十日に販売を始める、個人向けビスタの立ち上がりをどうみる。

 「一般消費者の間でもビスタへの注目は高まりつつある。(パソコン教室で映画や音楽を楽しむ)デジタルライフスタイルの中核としてビスタは最適なOSだ。ビスタは日本のパソコン市場を再び成長路線に乗せる起爆剤になると信じている」

 「パソコンメーカーと協力してビスタの魅力をユーザーに売り込む。発売後もしばらく続く息の長い取り組みになるだろう。個人だけでなく、中小企業や教育分野といった対象顧客別にきめ細かな販売促進策を地道に続けたい」

 ――インターネット技術の新潮流「Web2・0」によって、インターネット経由でのソフト提供が一般的になりつつある。ウィンドウズやオフィスは今後どう対応する。

 「『サービスとしてのソフトウエア』という考え方は否定しない。当社もソフトの修正版をネットで自動配布したり、ネット経由でかな漢字変換を可能にするなど積極的に対応している」

 「ただし、すべてのソフトがウェブ上に移行するとは思えない。パソコン教室のハードはこれからも速く、安くなるのに、それを生かさないのはもったいない。パソコン上のソフトとウェブ上のソフトが連携をとりながら処理をこなす形式が、今後も主流であり続けるはずだ」

 遠藤泰男(水・ミネラルウォーター評論家&パソコンインストラクター)



ニュース拡大鏡/マイクロソフト、「ウィンドウズ・ビスタ」リリース

2006/12/01

 マイクロソフト(MS、東京都渋谷区、ダレン・ヒューストン社長、03・4332・5300)は30日、基本ソフト(OS)の新世代版「ウィンドウズ・ビスタ」の企業向けボリュームライセンス販売を開始したと発表した。オフィスソフトの新版「2007オフィスシステム」も同時に発売。01年の「XP」発売以来5年ぶりのOS新バージョンとなり、移行がスムーズに進むかどうかが今後の焦点になる。(清水信彦、村上毅)

 OSとオフィスソフトの新版を同時発売するのは、95年の「ウィンドウズ95」以来。OSとオフィスソフトを同時発売することで、95年当時の盛り上がりをもう一度演出したいという戦略が透けて見える。

 ダレン・ヒューストン社長は「新しいハードとソフトを組み合わせると、まるで新車を運転しているような気分になる」と紹介。パソコン教室の電源を入れて即座にOSが立ち上がる様子を実演し、"新車"並みの快適さを示してみせた。

 新しいビスタで大きく進化した点はユーザー・インターフェース(UI、操作画面)やセキュリティー機能、情報検索機能の向上などだ。

 ヒューストン社長のデモでは企業ユーザー向け販売ということもあって、メールソフトの「アウトルック」や表計算ソフト「エクセル」などの新しいオフィスソフトが中心になった。電子メールやグループウエアなどの機能を持つサーバソフト「エクスチェンジサーバ」の新バージョンとの連携機能を強化しており、仕事の能率を大幅に向上できるという。

 しかしこうしたオフィスソフトの"抱き合わせ"販売については、新OS単体では企業ユーザーに訴える力が弱いといううがった見方もできる。一連の新オフィスソフトは現状のXP上でも稼働するだけに、OSの旧版から新版への移行を促す要素になるかどうかは不透明だ。

 果たして新しいOSへの移行はどれくらいのタイムスパンで進むのか。ヒューストン社長はその答えを「1―2年ですべて置き換わるわけではない。時間はかかるが仕事の効率などを考えると新しいOSの価値は明らか」と説明した。

 すぐに置き換え需要が盛り上がるかどうかについては不安な面もある。OS上で稼働するアプリケーション(応用ソフト)の動作検証には、通常1年から1年半程度かかると言われている。新しいソフトには品質問題がつきものだからだ。ソフトが高機能化したこともあり、品質が安定してくるにはしばらく時間がかかる。

 しかしこうした懸念にMSは「(問題部分に修正ファイルを一括して当てる)サービス・パックのリリース時期は公開していない」(ジェイ・ジェイミソンウインドウズ本部本部長)と指摘。現状の仕上がりに一定の自信を見せている。

 新しいOSは、現在使用しているバージョンからのアップグレードという形で提供。企業ユーザーはボリュームライセンスで購入する。価格は5―200ライセンスの場合、1台あたり2万円前後になるという。

遠藤泰男(水・ミネラルウォーター評論家&パソコンインストラクター)



マイクロソフト、ビスタ発売 関連ソフト続々 法人市場へ大攻勢

2006/12/01

 マイクロソフト日本法人は30日、最新型OS(基本ソフト)「ウィンドウズ・ビスタ」と、統合ソフト「オフィス」の企業向けライセンス販売を開始したと発表した。

 また併せて今月中旬からビスタと親和性の高い「マイクロソフト・エクスチェンジ・サーバー」最新製品も市場に投入すると発表した。

 マイクロソフトは、同サーバー向けセキュリティーソフトの発売も表明しており、ビスタを軸に、企業のIT(情報技術)インフラを包括的に取り込む姿勢を鮮明にした。

 同日発売されたビスタは、「エンタープライズ」「ビジネス」「アルティメット」の3製品。いずれもセキュリティー機能を大幅に向上させたほか、ファイルの3次元同時表示機能を備えるなど、企業の業務効率のための各種機能を搭載したのが特徴だ。

 価格はライセンス販売のため販売本数により異なるが、来年1月30日に一般消費者向けに発売予定の「ビジネス」は、通常版価格が3万7800円となっている。

 同日会見したダレン・ヒューストン社長は、自らビスタなどの新製品が搭載されたパソコンを使ってデモを実施。「企業の生産性を高められるだけでなく、ITコストの削減やセキュリティー性を向上させられる」とその能力を強調した。

 マイクロソフトの最大の狙いは、ビスタだけでなく関連製品群を企業が同時導入することで、「企業内インフラ全体において最大限のシェア獲得を目指す」(平井康文執行役専務)ことにある。

 同社は、マイクロソフト・エクスチェンジ・サーバーに対応する、同社初の統合セキュリティーソフト「マイクロソフト・フォアフロント」を1日に発売し、企業のネットワークセキュリティー分野に本格進出する意向を明らかにした。

 フォアフロントでネットワークセキュリティーを維持しつつ、パソコン上で高いセキュリティー性を持つビスタを使用してもらうことで、企業インフラ全体の安全性を確保するという、うたい文句だ。

 企業がビスタ搭載のパソコンを本格導入するには「各社が機能の検証を行った後になるため、まだしばらく時間がかかる」(蒔田佳苗・ガートナージャパン主席アナリスト)とみられており、マイクロソフトも「これら製品が市場に根ざすにはまだ時間がかかる」(ヒューストン社長)とみるなど、法人市場開拓は決して容易ではないとの見方が支配的だ。

 ただOS、ソフト、サーバーなど、全方位でビスタ導入のメリット向上を図る戦術で、マイクロソフトは「1年または1年半で国内で流通するパソコンへのビスタ搭載率を前作のXPより高めたい」(広報)考えだ。

遠藤泰男(水・ミネラルウォーター評論家&パソコンインストラクター)



マイクロソフト、企業向け「ウィンドウズ・ビスタ」発売

2006/12/01

米マイクロソフト(Nasdaq:MSFT)は30日、新しい基本ソフト(OS)「ウィンドウズ・ビスタ」の企業向け製品を発売した。同社はこの発売を「マイクロソフトの歴史上、非常に重要」と位置づけている。

スティーブ・バルマー最高経営責任者(CEO)は、ナスダック市場でのセレモニーのスピーチで「ビスタは、来年末までには2億人以上が利用することになるとみられ、業界の姿を変える製品だ」と語った。

ビスタは、同社のOSとしては2001年に「ウィンドウズXP」を発売して以来、約5年ぶりの新製品。ビスタの発売は当初の予定より2年以上遅れた。このほか、ワープロや表計算などのソフトを組み合わせた「オフィス2007」と電子メールソフト「エクスチェンジサーバー2007」も同時に発売された。バルマー氏は「ビスタとこれらの新たな応用ソフトは、顧客企業の通信環境を向上させ、ワイヤレス通信網や企業の情報システムへの接続をより容易にする」と述べた。

ビスタは、3次元画像などの画像処理能力が大幅に向上したほか、セキュリティー対策を講じやすくしたのが特徴。ヒューレット・パッカード(HP)(NYSE:HPQ)のビスタ担当責任者、トム・ノートン氏は「証券仲介業者など金融業界は、セキュリティー機能への関心が非常に高い」と指摘した。

個人向けのビスタは、来年1月30日に発売される。

ビスタ発売は、マイクロソフトの利益にとって重要であるばかりでなく、2000億ドル規模のパソコン業界にとっても非常に重要な意味を持つ。「ウィンドウズ」と「オフィス」は同社の利益の90%を占める。また、世界のパソコン教室の90%に相当する8億台がウィンドウズを搭載している。

ただ業界専門家は新製品について、「圧倒的に魅力的」な機能がないため、直ちに大ヒット商品になる可能性は低いとみている。また、ウィンドウズXPは個人にも企業にもまだ人気が高く、直ちにビスタを導入する必要を感じていない可能性があるとの指摘もある。

だが複数の調査会社によると、ビスタは発売後1年間で世界の約1億台のコンピューターにインストールされると予想されている。

ビスタ発売に、株式市場は反応薄だった。マイクロソフトの30日終値は、前日比0.21ドル(0.71%)安の29.36ドル。

遠藤泰男(水・ミネラルウォーター評論家&パソコンインストラクター)



「ビスタ」きょう企業向け発売、個人向けは来年1月、パソコン各社、春に照準。

2006/11/30

 米マイクロソフト(MS)がパソコン用基本ソフト(OS)「ウィンドウズ・ビスタ」の企業向け販売を三十日に開始する。ビスタはMSが約五年ぶりに発売するパソコン用OSで、強固なセキュリティー機能などを備えた。ただ、企業向けは導入前に入念な動作検証が必要なほか、個人向けの発売は来年一月三十日にずれ込んだ。パソコンメーカー各社は来春商戦に照準を移しており、年内のビスタ効果は限定的になりそうだ。

 「(ビスタ発売後も)半年以上は企業向け主力OSは現行のXP」(NEC、富士通など)。メーカー各社はビスタ発売後も企業需要が急速に立ち上がるとは見ていない。ビスタの持つセキュリティー機能はウイルスによる情報流出などに頭を悩ます企業には魅力的。しかし技術的な変更も大きいため、社内ソフトを安心して利用するには動作検証作業に時間がかかるためだ。

 一方、年末に向けた個人向けパソコン商戦は、個人向けビスタの発売が来年になったことで盛り上がりを欠いている。調査会社のBCNによれば十月以降、パソコン教室の販売台数は前年同週比で八―九割前後と低迷が続く。十一月は八割を割り込む週もあり、ビスタ登場を前に買い控え傾向が強まっている。

 MSとメーカー各社は年末に販売するパソコン教室でXPからビスタへの更新料を値下げするキャンペーンを展開。買い控えの抑制を狙うが、「XP登場時は、同様のキャンペーンの利用率は一〇%弱にとどまった」(NEC)こともあり、大きな効果は期待薄だ。

 メーカー各社の期待は早くも年末商戦から春商戦に移っている。NECや富士通は昨年は年末商戦を意識して十二月に発表した新製品の発表時期を約一カ月後ろ倒しにする。

 パソコン世帯普及率はすでに八割を超え、今年度上半期はパソコン販売が前年割れになった。それでもNECや富士通など国内パソコン大手各社は年間出荷見通しを据え置いている。個人向けビスタの発売を契機に、春商戦でパソコン購入が急拡大するとの思惑からだが、買い控えの反動をうまくとらえられるかは不透明だ。

遠藤泰男(水・ミネラルウォーター評論家&パソコンインストラクター)



個人向け「ビスタ」発売も目前――「ビスタ」には互換性も注意。

2006/11/30

 五年ぶりの新版OSとなる「ウィンドウズ・ビスタ」の機能は現行の「XP」などと大きく異なる。ビスタ搭載機にPCを買い替える際はデータ移行だけでなく、これまで利用していた業務ソフトや周辺機器がそのまま利用できるかどうかにも気を配る必要がある。

 特に確認すべきなのは業務ソフトの利用権限に関する機能。ビスタはセキュリティーを大幅に強化した代償として、ユーザーごとに許される操作が厳格に制限されている。XPでは可能だったデータ書き込みなどの操作がビスタでは禁止されるケースもある。こうした業務ソフトはビスタ対応版にアップグレードするか、修正ファイルを適用するしかない。

 マイクロソフトは十一月二十一日から自社のウェブサイトでビスタの互換性に関する情報を公開し始めた。ソフトメーカー各社にも、自社製ソフトの機能をアピールすると同時に、これら参考情報をユーザーに周知させる努力が求められる。(星野友彦)

遠藤泰男作(水・ミネラルウォーター評論家&パソコンインストラクター)





企業向け「ビスタ」「飛びつけない」、マイクロソフトきょう発売(NewsEdge)

2006/11/30

長すぎた5年...、ネット企業進化

製品OS最後?

投資効果に疑問・トラブル懸念

 米マイクロソフトは三十日、基本ソフト(OS)の新製品「ウィンドウズ・ビスタ」を企業向けに発売する。パソコン向け市場では「リナックス」など競争相手が伸び悩む中、五年以上も新製品の投入なしに主役の座を維持し続けた。機能満載の「巨艦ソフト」に社運をかけるが、多くの日本企業はトラブルのタネになりかねない新OSの早期導入には及び腰。ビスタはスタートダッシュできるのか。

 「使用中の『2000』を捨ててまで導入する意味はない」。大成建設の木内里美情報企画部長のビスタ評は厳しい。同社は情報化先進企業として知られる。ビスタの基本設計や機能を評価した結果、「以前のOSで作った書類が読めないなど互換性の問題が大きい」として導入見送りを決めた。

 ビスタが動作に一ギガ(ギガは十億)ヘルツ以上の高速CPU(中央演算処理装置)と、一ギガバイト以上の大容量メモリーが必要なことも評価を下げた。メモリーは「2000」「XP」の二倍以上だ。大成は社内で一万三千台のパソコンを運用。ビスタを快適に動かそうとするとパソコン投資だけで数億円が必要だが、「投資に見合う効果が得られるとは考えにくい」(木内氏)。

 JTBも「安全運用が第一。すぐには飛びつかない」との姿勢。まずシステム開発子会社で運用中のシステムとの連携を検証し、問題がないことを確認できれば営業店などにも紹介する。「予約端末にビスタを使えるようになるには、少なくともあと数カ月はかかる」という。

 企業が早期導入に慎重なのは、情報システムにトラブルが起きると、経営の根幹が揺らぎかねないからだ。パソコン教室の使い方も以前のような文書作成やウェブ閲覧が中心ではなく、会計システムや顧客管理システムなどの端末としての役割が重くなっている。

 企業側の慎重姿勢とは裏腹に、マイクロソフトはビスタの普及に自信をみせる。日本での目標は「発売後二年で、パソコンOSの五割をビスタにすること」(日本法人)。これはXPを上回るスピードだ。

 手も打っている。二十一日にはビスタ導入に関する質問受付や技術支援を提供する「ビスタ対応支援センター」を設立。パソコンメーカーにも呼びかけ、二―三年前に発売されたパソコン教室でのビスタの稼働を確認させる念の入れようだ。

 自信の裏には不可欠な情報インフラとなった自社OSへの自負がある。当初は慎重でも、いずれはビスタを使わざるを得ないとの思いがあるはずだ。だがXPからビスタにつなぐまでに五年もかかったのは誤算ではなかったか。

 開発期間が長期化したのには幾つかの理由がある。まず機能や操作性を高めようとした結果、プログラムが肥大化し、開発に手間がかかったこと。ビスタのプログラムコードはXPより約四〇%増えた。

 さらに〇三年八月、パソコンが動作不能になる感染被害を出したコンピューターウイルス「ブラスター」が登場。開発中だったビスタを含む製品で情報セキュリティー対策の抜本見直しを強いられたことも響いた。

 一方、この間に周辺環境は大きく変わった。最大の変化はインターネットの本格的な普及と米グーグルなどのライバル企業の出現だ。

 マイクロソフトはグーグルに対抗するため、パソコン内の情報を検索する機能や、ネットと連携して動作する、天気予報やカレンダーなどの小型ソフト「ガジェット」をビスタに組み込んだ。だが、無償でソフトを配布し広告収入を得るグーグル型のビジネスモデルには依然消極的だ。

 創業三十年の節目を迎えた昨年九月、マイクロソフトは大幅な組織変更を表明した。七つに分かれていた事業部門を三つに束ねる内容で、目玉はOS「ウィンドウズ」、ネットサービス「MSN」両部門の統合だった。グーグルなどが台頭するなか、収益の柱であるOSをネット時代にどう対応させるか。マイクロソフトの危機感が表れたといえる。

 同年十一月にはビル・ゲイツ会長自ら、新ネットサービス「ウィンドウズ・ライブ」を発表。ネット事業は同社のなかでも優先順位の高い重点分野となっている。

 ただ圧倒的な収益力を持つOSビジネスの変革は簡単ではない。スティーブ・バルマー最高経営責任者(CEO)は、「すべての業務がネット上で済むわけではない」と、従来型ソフトの必要性を訴える。当面の経営戦略は、従来型ソフトとネットサービスの両にらみとなる気配が濃厚だ。

 二―三年後に登場すると予想されている次期OSでは、ネットワークを通じて必要なソフトを自由に追加・削除できる構造にする見通し。マイクロソフト・リサーチのダン・リン所長も「ネットが普及した今は、すべての機能をあらかじめパソコンに組み込んでおく必要はない」と語る。ネット経由で様々なソフトを配布する事業形態に移行する可能性は高い。

 長い時間をかけて開発し、DVDに膨大なソフトを記録して販売する従来のビジネス手法とマイクロソフトが決別し、今回のビスタが「最後の製品OS」になる可能性は低くない。さもなければ、時代の変化についていけず、IT(情報技術)産業のリーダーの座を明け渡すことになる。

【表】米マイクロソフトとウィンドウズの歩み    

<1995年>  

11月  「ウィンドウズ95」日本語版・発売

<1998年>    

4月  米リアルネットワークス「リアルプレイヤー」発売  

5月  米司法省が米独占禁止法違反でマイクロソフトを提訴  

2年8カ月  

7月  「ウィンドウズ98」日本語版・発売

<2000年>    

1月  スティーブ・バルマー社長がCEO(最高経営責任者)に就任  

2月  「ウィンドウズ2000」日本語版・発売  

1年7カ月  

9月  「ウィンドウズMe」日本語版・発売

<2001年>    

  「コードレッド(7月発見)」「ニムダ(9月発見)」などネットワーク型のコンピューターウイルスまん延  

10月  米アップル・コンピュータ、「iPod」発売  

1年9カ月  

11月  「ウィンドウズXP」日本語版・発売

<2002年>    

1月  ビル・ゲイツ会長が「トラストワージー(信頼できる)コンピューティング」を提唱  

9月  「ウィンドウズXP」のセキュリティーを強化する修正プログラム「サービスパック1(SP1)」日本語版の提供を開始  

<2003年>    

8月  ウイルス「ブラスター」発生、国内外で甚大な被害  

<2004年>    

4月  米サン・マイクロシステムズと特許の相互利用で合意  

8月  米グーグル、ナスダックに上場  

9月  「サービスパック2(SP2)」日本語版を提供開始  

<2006年>    

11月  「ウィンドウズ・ビスタ」日本語版・発売  


遠藤泰男(水・ミネラルウォーター評論家&パソコンインストラクター)



深層断面/マイクロソフト、次期OSを市場投入

2006/11/30

 マイクロソフト(MS、東京都渋谷区)は、「ウィンドウズXP」の後継にあたる次期基本ソフト(OS)「ウィンドウズ・ビスタ」を満を持して市場投入する。個人向けは07年1月30日に発売する予定。これに先立ち、ビスタの"企業版"を30日発売する。「XP」から5年ぶりの出荷にパソコン各社は期待を寄せる。しかし、発売日をさんざん待たされただけに業界内は"ビスタ効果"を手放しで喜べない複雑な思いも渦巻く。(編集委員・斎藤実、川口浩、村上毅)

 「パソコンは情報産業のハブ(中心)であり、企業や家庭のコントロールポイントだ」。米MSのスティーブ・バルマー最高経営責任者(CEO)は11月上旬に来日し、ビスタ発売に向けた意欲を誇示した。

 収益の源泉となるOSの世代交代に5年間を費やしたことについて「一度にすべてを変えようと試みた」結果、誤算が生じたことを明らかにした。ただ、「今後は5年間も間隔を持たすことは二度とやらない」と明言。「ビスタはこれまでの製品の中で最もワクワクする」と熱弁を振るった。

 全世界では2億台以上のパソコンが毎年出荷されている。インドや中国など新興IT国の台頭により、パソコン教室の出荷台数はさらに膨らんでいくのは間違いない。MSとしてはこの流れを加速させることが至上命題だ。

 しかし、バルマーCEOが唱える「パソコン中心の流れ」は、ユビキタス時代を迎える中で大きく揺れている。市場では携帯電話機や携帯情報端末(PDA)、ゲーム機などパソコン以外の情報機器が続々と登場し、用途に応じてそれぞれが主役の座に躍り出ようとしている。さらに通信と放送の融合化が進む中でパソコンは家電化し、パソコンテレビをめぐる議論も活発化している。

 MSは失敗を許されない状況にある。検索エンジンの米グーグルに代表される新興勢力との戦いに心血を注ぐ一方で、巨大企業ゆえの悩みも抱えている。ユビキタスの第一人者である坂村健東大大学院教授は「あれだけの企業規模になると、どうしたって保守的にならざるを得ない」と指摘。

 とはいえ、ようやくビスタを世に送り出す体制ができた。企業版は同社の真価を問う試金石となる。まずは「お手並み拝見」といったところだ。

 《パソコンメーカーの動向》

 パソコン各社のウィンドウズ・ビスタへの期待は大きい。06年度上期(4―9月)の国内販売実績は台数、金額とも前年同期の9割台と苦戦し、ビスタ登場を需要喚起に結び付けたいところ。しかしビスタ待ちによる買い控えが年末商戦に予想されており、売れ筋のA4ノート型では早くも価格の叩き合いに突入している。

 「07年1―6月に60万台プラスアルファの上乗せがあるのでは」とMM総研の中村成希ITプロダクツ研究グループ部長は"ビスタ効果"を試算。上乗せ分は買い控えの反動増が中心だ。ビスタ待ちの買い控えが始まったとみられる06年度第2四半期(7―9月)以降の落ち込みをカバーし、どこまで例年の需要を上回れるかがポイント。

 国内パソコンメーカーは年末年始に向けた目玉製品の投入はなく、1月のビスタ発売日に足並みをそろえて春モデルを発売する方針。現行モデルの購入者にビスタを優待価格で販売する買い控え対策を打っている。しかし、「量販店は携帯電話、家庭用ゲーム機という強力な商材で年内を乗り切れる。パソコン教室の拡販に力を入れるのはビスタ登場以降」(中村部長)と年末商戦は低調に推移しそうだ。

 05年の年末商戦で各社は需要を先取りするため、従来1月末ごろだった春モデル発売を繰り上げていただけに大きな様変わりとなる。

 ただパソコン需要低迷は、ビスタによる買い控えだけでは説明できない。「液晶テレビの低価格化で消費が分散傾向にある」(同)という。国内パソコンメーカーは家庭の2台目需要に期待してきた。液晶テレビはリビングから寝室に広がり、パソコン教室の対抗馬になっている。

 裏返せば、需要低迷の要因はパソコン教室の商品力の弱さになる。地上デジタル放送視聴などの音響・映像(AV)機能が差別化の決め手になっていない。

 ビスタの機能、導入メリットを消費者が慎重に見極めている節もあり、ウィンドウズ95当時のような盛り上がりの再現は期待しにくい。

 《ビスタの概要》

 ウィンドウズ・ビスタのポイントは操作環境となるユーザーインターフェースの刷新とセキュリティー機能強化の2点だ。新しいユーザーインターフェース「エアロ」を採用し、上位機種では3次元表示などができる。例えば、ウインドーを透過して表示したり、傾けて表示することなどができる。

 また、データを丸ごと暗号化する機能「ビットロッカー」なども搭載し、セキュリティー対策機能を高めている。特に企業版ではユーザー権限の保護やデータの保護、マルウエア(悪意のあるプログラム)対策などセキュリティー対策を多層化した。

 《私はこう見る/ガートナージャパンアナリスト・針生恵理氏》

 今回の強化機能のうち、標準搭載となったセキュリティーなどが評価できる。ただ、基本ソフト(OS)だけでセキュリティー対策がすべてできるわけではなく、セキュリティー専業ベンダーとの棲(す)み分けが必要となるが、競合関係はよく見えない。

 これまでのOS製品との違いはいくつかある。例えばビスタではOSの種類を個人・企業向けでそれぞれ複数用意し、利用者に選択肢を与えている。パソコン各社がどのOSを採用し、どう販売するのか。メーカーによって販売戦略は大きく分かれるかもしれない。

 ビスタに対応したアプリケーション(応用ソフト)の動向も注目される。主力ソフトベンダーはすでに製品対応しているだろうが、これから本格対応するベンダーも数多いはずだ。ビスタの場合、ベータ版(テスト版)のリリースから製品販売までのスケジュールは他のOSに比べて異例の早さだ。このため周り(ソフトベンダーなど)がついていけないこともあり得る。

 さらに、OSの精度が高ければ高いほど、アプリケーションの動作確認に時間がかかる。新しいOSはそれ自体の品質の良しあしはもとより、既存のアプリケーションとの互換性が懸念される。 一般に企業の場合、新規ソフトを導入するためのテストに軽く1年はかかるもの。このため、ビスタ本格導入は1年から1年半後になるだろう。(談)

遠藤泰男(水・ミネラルウォーター評論家&パソコンインストラクター)



シマンテック オンラインでデータ保存 セキュリティー製品試験版

2006/11/28

 ウイルス対策などセキュリティーソフト大手のシマンテック(東京都港区)は27日、従来のパソコン上でのセキュリティー機能に加え、オンラインでデータのバックアップを行える次世代型セキュリティーソフトの試験版の無料ダウンロードサービスを開始した。個人が扱うデータ量が増えており、より安全性を高めるのが狙い。同様のソフトはマイクロソフトなども来年、発売する予定で、2007年は次世代型セキュリティーソフト元年となりそうだ。

 シマンテックの次世代ソフト「ノートン360」は、ウイルスやスパイウエア対策などパソコン上でのセキュリティー機能に加え、外付けハードディスクやネットワークを通じ、外部の記憶装置に作業中の文書・画像など各種データを保存できる。現在は試験版(言語は英語)のみだが、来年3月には商品化し、日本国内で発売する。

 容量の大きいデータをパソコン上で処理・保存するユーザーが増大するなか、データをパソコン以外の記憶装置に安全に保管したいという需要が高まっており、こうしたニーズに応えた形だ。

 同様の次世代型セキュリティーソフトは、マイクロソフトが来年1月末の新OS(基本ソフト)「ウィンドウズ・ビスタ」発売と同時期に「ウィンドウズライブ・ワンケア」として投入する計画だ。また、セキュリティーソフト大手のマカフィー(東京都渋谷区)も9月に発売した「インターネットセキュリティースイート2007」などの製品に、近く、ネットワーク経由の自動データバックアップ機能を追加する。

 富士キメラ総研の山本貴史調査員は、現在はネットワーク上のデータ送信容量に制限があるため、これらのデータ保存サービスを備えた製品は既存のパソコン上のみのセキュリティー機能を持つ製品と当面は共存するとみられるものの、「環境が整えば、今後は各社とも同様の商品に移行する可能性がある」と指摘している。

遠藤泰男(水・ミネラルウォーター評論家&パソコンインストラクター)



「ウィンドウズ・ビスタ」1月30日発売 マイクロソフトCEOが明言

2006/11/07

 米マイクロソフトのパソコン向け最新OS(基本ソフト)「ウィンドウズ・ビスタ」の発売日が、来年1月30日に決まった。これは来日した同社のスティーブ・バルマー最高経営責任者(CEO)が6日、東京都千代田区のホテルニューオータニで行われた国内パソコンメーカーとのフォーラムで明らかにした。「ビスタ」の発売日を同社経営陣が明言したのはこれが初めて。

 ビスタは当初、年内発売が予定されていた。しかし、発売が来年に延期され、年末商戦の目玉としていたパソコンメーカー各社の期待は空振りに終わっている。発売日が決まったことで、パソコンメーカーのビスタ商戦がようやく幕を開ける。

 バルマーCEOは、フォーラムで「1月30日には皆様を喜ばせることになる」と述べ、ビスタ発売日を表明した。これに合わせて、文書作成や表計算などの統合ソフト「オフィス」の最新製品も発売される。

 ビスタは、マイクロソフトが「『ウィンドウズ95』以来の大型商品」(日本法人役員)と意気込む戦略商品。立体的な画面表示や高セキュリティー性といった最新技術に加え、音楽や動画などのコンテンツ(情報の内容)をリモコンで楽しむ機能を盛り込んでおり、同社のデジタル家電市場開拓の切り札となる。

 価格は廉価版が2万5800円などとすでに発表されていたが、明確な発売日が示されていなかったため、年末商戦でのパソコン買い控えが懸念されていた。発売日が決まったことでビスタ搭載パソコン教室の販売合戦が本格化するのは確実で、IT(情報技術)関連の調査会社、ガートナー・ジャパンの蒔田佳苗・主席アナリストは「来年1?6月のパソコン販売は上向く」と予想している。

 ビスタの高度な機能を利用するには、高性能の最新型パソコンが必要となる。このため、インターネットや電子メールなどの利用にとどまる多くの一般ユーザーが、ビスタを購入してOSを更新するかどうかは未知数。蒔田氏は「マイクロソフト側の一層のPRが必要」と指摘している。

遠藤泰男(水・ミネラルウォーター評論家&パソコンインストラクター)



シマンテックCEO、「ビスタ」改善評価、安全対策ソフト巡り。

2006/11/03

 セキュリティー対策ソフト大手、米シマンテックのジョン・トンプソン会長兼最高経営責任者(CEO)は二日、東京都内で記者会見した。マイクロソフトが次期基本ソフト(OS)「ウィンドウズ・ビスタ」に外部企業のセキュリティーソフトを簡単に使えるようにしたことについて、「消費者の選択肢確保に向け前進した」と評価した。

 二〇〇七年一月発売の「ビスタ」は、シマンテックなどが供給してきたウイルス対策などパソコン教室のセキュリティー機能をOS自体に盛り込むのが特徴。

 これに対し自社製品の需要を奪われる可能性があるセキュリティー対策ソフト各社は「競争阻害」と公の場で指摘するとともに、欧米独禁当局にロビー活動を展開してきた。

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